さて、コレステロールと認知症の関係ですが、脳血管性の認知症のリスクは別にして、アルツハイマー型認知症については、コレステロールが発症リスクに関与するかどうかは、さまざまな報告があって、一定の見解が得られていません。

 コレステロールは神経および脳・脊髄などに多く含まれています。なんと脳は、その70%が脂肪からできているのです。脳の神経細胞は情報を電気的に伝えていますが、その時に漏電を防ぐために、神経の突起物を包んでいるのは脂肪です。脂肪の中には、当然、コレステロールが多く含まれているので、そのコレステロールが少ないと、さまざまな脳機能の低下をもたらす恐れがあります。

 現状では軽々に論じることはできませんが、がん治療の現場に身を置いてきた直感としては、コレステロールは少し高めの方がいいように思っています。ですから、私自身は認知症を防ぐ意味からも少し高めに維持しています。

週刊朝日 2018年7月20日号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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