東京都の女性(49)は4年前、会社の上司と折り合いが悪く悩んでいた。家族には心配をかけたくないので相談できず、占師に助言を求めるようになった。

「当時はとても救われました。自分がわからなくて、それをつかむために利用したのだと思います。でも、みんな、目がさめるときがきっとやってくる」

 こう女性は言うが、今でも神秘的なことには興味がある。

「最近、私の周囲では『リアル神様』が話題なんですよ。大阪にいて、何でもお願いを聞いてくれるらしいんです」

 幸せビジネスをしている側の意見も聞いてみた。

 スピリチュアルセラピストとして、20年で5万人以上のカウンセリングに関わったという女性はこう話す。

「依頼者と信頼関係ができる前は、話を否定せず徹底的に聞きます。人生の選択ミスや誤った認識を一つひとつ明らかにして、本当は何がしたいのかを導き出していきます」

 信頼してくれるようになれば、その人の魂の記憶を導き出すこともできるようになるという。信じるも信じないもその人次第。エンターテインメントとして体験してみるのも、悪くないのかもしれない。

 こうした幸せビジネスはいろいろある。占いだけでもカードや水晶、手相など多種多様だ。「お金持ちになれる開運セミナー」「霊視鑑定のスピリチュアル体験」といったイベントも各地で開かれている。

 信じて助かっている人もいるので全面的に否定するものではないが、大金を失ってから後悔するケースは少なくない。ハマりすぎて依存し、自分で自分のことが決められなくなる危険性もある。家族や友人が注意しても、「この占いはすごく当たる」などとして、受け入れられないことも。

 占師らは結果を伝える際に、誰にでも当てはまるようなあいまいな表現を用いる。例えばこんな感じだ。

「あなたは明るそうに見えますが、本当は悩みを抱えていますね」

 みんな悩みはあるはずなのに、相談した人は自分の性格を的確に見抜いてくれたと思い込むのだ。心理学用語で「バーナム効果」と呼ばれる。米国の心理学者が、誰もが楽しめるサーカスを考えたとされる興行師にちなんで命名した。

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