「年が明けると、待っていたかのように数多くの売りが出てくると見ています。当然、不動産価格は下がるでしょう」

 もう一つは、榊原教授お得意の株価との関連性である。

「1980年代の平成バブルのときは、89年末に日経平均株価が3万8957円の高値をつけて株式の暴落が始まり、地価はそれから1年遅れて90年末から下落し始めました。一方、06年から08年の、いわゆるミニバブル(「ファンドバブル」ともいわれる)のときは、日経平均がピークになったのは07年2月の1万8300円で、地価下落は08年の年初前後から始まりました。つまり、株価がピークアウトすると、それから半年から1年遅れて地価が下がり始めるのです」

 今年の株価は1月につけた「2万4129円」が今のところ最高値だ。好調な企業業績を反映して今後、株価は上昇する可能性が残っているが、1月がピークだったとすると、19年1月でちょうど1年を迎えることになる。

「税制による売りの出現と過去の経験則から、来年早々から地価は下がるでしょう。いったん下がり始めると、『オリンピックまではもつ』とする見方に懐疑的だった人たちが、流れに乗り遅れまいと売り始めるでしょう。結局、売りが売りを呼ぶ展開になり、地価はどんどん下落していく」

 何とも恐ろしい説である。これが現実のものになるとするなら、不動産の売却を考えている人は今すぐ、実行したほうがよくなる。

 この説が成り立つには、東京オリンピックが決まってから年末までの間に取引された物件がなくてはならない。13年9~12月の実際の取引はどうだったのか。

 不動産経済研究所が毎月発表している「首都圏のマンション市場動向」を見ると、新築マンションの供給はかなり活発に行われていたことがわかる。13年9月は前年同月比77%増の約6千戸だったし、11月は約5千戸、12月も約8200戸だった。また、投資物件になりやすい20階以上の超高層物件が約4900戸、この時期に分譲されている。

「このうち実需ではない投資家がどれほどの割合を占めているのかはわかりませんが、当時、すでに中国の富裕層は日本の高級マンションを買い始めていました」(榊原教授)

次のページ