北原みのり「風景のように根付く性差別」 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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北原みのり「風景のように根付く性差別」

連載「ニッポン スッポンポンNEO」

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北原みのり週刊朝日#北原みのり
北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

差別が風景のように根付く社会であれば、突然目の前ではじまる差別を差別と認識できなくなるのか…(※写真はイメージ)

差別が風景のように根付く社会であれば、突然目の前ではじまる差別を差別と認識できなくなるのか…(※写真はイメージ)

 作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は、「性差別」について。

*  *  *
 空港でチェックイン待ちの列に友人たちと並んでいたときのこと。60代半ばくらいの夫婦がバタバタ走ってきて、列を仕切るパーティションベルトをポールから外し、私たちの前に割り込んできた。ビジネスクラスの列に間違えて並んでしまったようで、慌ててエコノミーの列にきたようだった。しかし、なぜ、ここで割り込む?と微妙な気持ちで友人と目配せしていたら、いきなり夫が妻を罵りだしたのだった。

「ここに差し込めばいいだけだよ! なぜできない? ばかか? 何やってんだ?」

 夫が外したベルトをポールにはめるのに妻が手間取っていた、だけ、だった。それなのに夫は「こいつがばかで迷惑かけます」という調子で周囲を意識しつつ、妻を罵るのだった。時間にしたら十数秒の短さだが、その場の空気を一転させるのに十分な異常さだった。そしてそれは、この夫婦の日常なのだろう。罵りを浴びうつむく妻の横顔は完全に無表情で重く、きつく結んだ口元は「何も感じない」と決意した年月の結論のように見え、私は自分の息があがるのがわかった。

 順番が来てカウンターに呼ばれたとき、快活な調子でカウンターの女性に話しかける夫の横で、妻は終始下を向いていた。旅慣れた調子で非常口近くの席を要求する夫の隣で、妻は背中を小さく丸めていた。周りからは海外旅行なんて羨ましい、いいご主人ね、なんて言われているのかもしれない。隣で友人がぼそりと言った。「完全にDVだよ」


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