この番組、さりげなく専門家が登場し、いきなりマニアックなテーマを語らうスタイルが「ブラタモリ」っぽい。ただ、地形や歴史などタモリの薀蓄(うんちく)に専門家もたじたじな「ブラタモ」に比べて、こちらは深すぎる理系話に文系脳の又吉はだいたいいつも目が点だ。見ている私は目が点どころか、脳が無になる。

 数学者・吉永正彦先生が「超平面配置」を説明するために用意したのは、湯豆腐。ネギは線として、1次元。4回切ると5個に分かれる。昆布は2次元。2次元は四つの線で分断すると、最大で11個に分けられる。豆腐は3次元。3次元を四つの面で分断すると最大15個に分けられる。分断の最大数には規則性がある。又吉と先生が静かに豆腐やネギを切り、そんな原理について語り合う。1次元と2次元と3次元が鍋に入り、ぐつぐつと煮えあがる。

 まったくもって「ヘウレーカ!」できないんだけど、鍋の中には宇宙があって、そして湯豆腐が美味いってことだけは、確かに「ヘウレーカ!」なのだった。

週刊朝日  2018年7月6日号

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カトリーヌあやこ

カトリーヌあやこ

カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など。

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