しかし、プロの世界は競争が厳しく、キラキラした面ばかりではない。日本国内の平均年俸を見てみれば、サッカーJリーグ1部(J1)所属選手が2600万円程度に対し、野球選手は3900万円ほど。額面では、野球選手のほうがはるかに上だ。さらに、Jリーグは2部(J2)になると、平均年俸400万円程度と格段に下がる。

「そして3部(J3)のクラブチームにまでいけば、プロと無報酬のアマチュアの選手が入り交じった構成。プロ契約でも年俸の下限はなく、ほとんどの選手がアルバイトをしながらプレーしているのが現状です」(前出のサッカー専門誌記者)

 プロになれたとしても、年俸の上限がない「プロA契約」は1チーム原則25人までと人数が限られている(J1は15人以上、J2は5人以上)。「プロB契約」と、「プロC契約」の年俸は、上限が480万円。その結果、J2では会社員の平均年収ほど、J3ではフリーターのような稼ぎにしかならないのだ。

「しかも、Jリーグの平均引退年齢は25~26歳。一部のトップ選手を除けば、プロ契約を結んでもサッカーでリッチな生活を送るのは難しい。セカンドキャリアも厳しく、Jリーグの人気クラブでもコーチの給料は、25歳で月給20万円くらいが一般的で、単年での業務委託契約がほとんど。だから、家族を養っていかなければならない年齢になると、一般企業に転職する人も少なくない」(同)

 いつ転落するかわからない、勝負の世界を生きるサッカー選手。その妻になることは、結婚を機に悠々自適な暮らしを手に入れることとは違う。人生を上昇気流に乗せるためには、大迫の妻、三輪がそうであるように、夫がキャリアアップできるように、自らの工夫と努力で献身的にサポートすることが必須なのだ。

 特に重要なのが、食事面。槙野の妻、高梨も付き合いだしたと思われるころから、手料理の写真をSNSにアップ。一流選手の妻を意識していた証しだろう。また、海外チームに移籍ともなると、現地の食事になじめない選手も珍しくない。

「海外では、昼食はチームから出されても、朝食と夕食は自宅で食べることが多い。さらに日本は和洋中と食事内容がバラエティーに富んでいますが、海外の食事は、単調なメニューも多く、体重を減らしてしまう選手もいる。体を作る毎日の食事がいかに大事かということです」(同)

 毎日が勝負の選手にとって、妻の精神的な支えも欠かせない。

「いつだってpapaと同じ気持ち」「私も魂込めて応援する」

 長友選手の妻、平は、インスタグラムに長友へのエールをこうつづり、夫と同じ金色に髪を染めて応援する姿が話題を集めた。

「サッカー選手の妻に求められるのは、夫と同じくらいサッカーに一生懸命になれること。そして夫婦同レベルで、感動を共有できることでしょう。平さんの金髪は、まさに、究極の寄り添い力を象徴した姿。サッカー選手にとって、理想の妻像では」(岡野さん)

 W杯で垣間見えた、選手を支える“妻力”。学ぶポイントが多そうだ。

(本誌・松岡かすみ)

週刊朝日 2018年7月6日号

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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