室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
(c)小田原ドラゴン
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 トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が、非核化に向けた合意文書に署名した米朝首脳会談。作家・室井佑月氏は、首脳会談の成果を高く評価したうえでその意義を語る。

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 米朝首脳会談、喜んでいる人は少ないみたいだ。なんで? ミサイル実験をくり返す北朝鮮はヤバい国、この国の御大将は、そのことを国難とまでいってたじゃん。

 どこにミサイルが落ちるかわからないといって、Jアラート鳴らしたり、もしものための避難訓練までしたり。Jアラートが鳴ったら、頭を抱えてしゃがみ込めってやつよ。

 でもって、テレビではオドロオドロしい音楽にのせてミサイルを詳しく解説、北朝鮮に詳しいという人が毎日出てきて、かの国がミサイルをぶっ放す『Xデー』というのをしつこくやった(予言がまったく当たらないため、Xデーはころころ変わった)。

 ありゃあ、なんの祭りだったかね? 自公与党が選挙で勝利するため、メディアと組んだ?

 いやあ、良かったんだよ。辺(真一)さんのXデーが当たらなくて。

 ほかにも、平昌五輪後に米軍が『鼻血作戦』を考えているなんて話まで出ていたんだから。

 鼻血作戦とは、全面戦争を避けた先制攻撃。先に鼻血が出るくらい北朝鮮を殴って、反撃する気を消失させる作戦のこと。

 鼻血が出た北朝鮮は絶対に黙ってるか? 国の大きさが違うんだから、米国にとっては鼻血でも、北朝鮮にとっては大事で、最後の力を振り絞り、米国の忠実な手下である日本に、ミサイルぶっ放したらどうしよう、そんな心配をしていた人もいるんじゃないか。あたしはそうだった。

 だから、米朝会談を素直に喜んだ。

 米朝会談の共同声明に、完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)は盛り込まれなかったけど、その後の会見でトランプさんは、「完全な非核化には長い時間がかかる」「北朝鮮の体制は保証する」ともいった。これってつまり、北朝鮮が非核化に向けて協力する限りは、北朝鮮と戦争はしないってことじゃん。

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室井佑月

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室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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