働く女性の最大の落とし穴は『ヒステリック』になる、もしくは見えることです。そしてそのほとんどは、男社会によって突きつけられる様々な『焦り』から来ます。どんなに優秀で器量が良くても、カリカリ・キーキーしている女は、男性からも女性からも敬遠されがちですが、有働さんはそんな素振りを微塵も感じさせません。何よりも声のトーン。彼女の声には『欲』がない。「可愛く思われたい」「デキる女に見られたい」「敵を作りたくない」。そんな『欲』を感じ取った瞬間に、人は抵抗感を抱くものですが、有働さんの声は世間に対して極めて丸腰状態。それでいて『あさイチ』などで見せていた、イノッチの横で勝手にあたふたする素の様が、観る者の心に限りない平安を与えるのです。

 向かうところ敵なしの有働さんですが、先日民放初のナレーションを観ました。きっちりフリーモードに切り替えた有働さんの声、鳥肌が立つくらい凄みがありました。是非ともその勢いで10月からの『NEWS ZERO』でも、櫻井よしこさん(きょうの出来事)が築いた“アンカーウーマンによる23時台”の復活を目指すべく頑張って頂きたい。できれば光量を落として。『NEWS ZERO』明る過ぎません?

週刊朝日 2018年6月29日号

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ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

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