田原:月2回ぐらいのペースでデートをしていますが、結婚は考えていない。

 年を取ると結婚に覚悟がいると言ったのは、結婚は相手の人生に責任を持つということだから。この年になると自分がいつ死ぬかわからないから。

■思い出を共有できる人がいい

蜷川:相手を完全に幸せにしてあげられる自信がない、ということでしょうか。

田原:そうですね。

猪瀬:いずれにしても、高校時代のマドンナと付き合うというのは、青春時代を思い出して、自分も高校生になったような若々しい気分になれるのではないですか。

田原:高校時代の同級生だから見えもハッタリもきかない(笑)。肩ひじを張らないのがいいのかも。

蜷川:思い出が共有できるというのは素晴らしいことですね。

田原:「あのときね」と言って昔話を同時代人として共有できるのは楽しいね。

猪瀬:それは大事ですよ。恋する日常と言いましたが、日常を大切にするということは、相手との会話を大切にするということですから。いまワイドショーを騒がせている紀州のドン・ファン(野崎幸助氏)のように、結婚相手と55歳も年齢が離れていたのでは豊かな会話が生まれるとは思えない。

田原:でも、若さを保つには恋だけではなくて仕事が必要だと思う。

猪瀬:そうですね。優秀なのに60歳で定年になるとやることがなくなって、力を持て余してしまっている人がたくさんいます。

田原:さみしいのは、一緒に仕事をしていた人たちが、定年で仕事を辞めると、社会のことに興味を失ってしまうこと。安倍首相が、トランプ大統領が、という話に興味がなくなって、関心が自分の身近なことになってしまう人が多い。

猪瀬:人生100年時代と言われる今、大事なのは健康寿命を延ばすことです。国家のことを考えても、80過ぎても働けば健康寿命が延びて、医療費を削減することにつながる。定年後にもっと働きやすくできるよう、社会の制度や世間の見る目を変えていく必要があるでしょう。

田原:僕が84歳の今も病気しないのは、仕事をしているからだと思っている。僕は42歳でテレビ東京を辞めたけど、もしそのまま残っていれば、60歳で定年退職していたはずだ。

猪瀬:結局、入り口が一斉就職だから、出口も一斉定年になるのですね。高度経済成長は年功序列・終身雇用の一本道を行くことがエネルギーだと思われていたけど、それが働き方を硬直させることにもつながった。

(構成 書籍編集部・菅原悠吾)

週刊朝日 2018年7月6日号