子どもの生活や資産状況などによって配分に差をつけるのはいいが、禍根を残さないよう遺留分は確保しておいたほうがよさそうだ。

 遺言を用意するには具体的にどうすればいいのか。遺言には3種類ある。被相続人が自分で書く「自筆証書遺言」、2人以上の証人の立ち会いのもとで公証人に確認してもらう「秘密証書遺言」、口述内容をもとに公証人が作成する「公正証書遺言」だ。

 相続の専門家がすすめるのは公正証書遺言。法律に詳しい公証人がつくるため安心だ。課題は費用がかかる点で、資産が少ない人は利用しにくい。

 そこで期待されているのが、費用が抑えられる自筆証書遺言。いまの通常国会で審議されている民法改正案が成立すれば、使い勝手がよくなる。これまでは偽造されないように全て手書きするルールだったが、財産目録などはパソコンで作成できるようになる。亡くなった後に家庭裁判所で内容を確認する「検認」の手続きもいらなくなる。法務局で遺言書を保管する制度も新たにできる。

 みんなが自分で遺言を書く時代がやってきそうだ。

(2)×資産管理は本人がやる
→認知症の備えに民事信託 家族が資産管理して生活を維持

<ここがポイント>
●家族信託とも言われる。信頼できる家族に財産を任せる
●親から子ども、子どもから孫へと継承者を決められる
●認知症が進めば成年後見制度の併用も検討しよう

 少子高齢化社会に急速に向かっている。高齢者だけの世帯が増え、子どもが親の生活や資産について知らないことは珍しくない。

 そこで心配なのが認知症だ。厚生労働省によると患者数は12年で約462万人、65歳以上の7人に1人程度となっていて、今後も増える。知らない間に親の認知症が進んでいて、生活や資産管理ができなくなることも想定される。認知症で意思能力がないと判断されると、預貯金の引き出しや不動産の処分、生命保険への加入など、さまざまなことができなくなる。

 親が元気で判断力もしっかりしているうちに、資産管理を子どもらに任せる方法がある。「民事信託」だ。

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