「薬を飲み忘れないようにしてもらうことや、悪化要因の回避も重要です。CKDの人は風邪や高熱、脱水、鎮痛薬の服用、造影剤の使用で急激に腎機能が低下し、急性腎障害(AKI)に進行することがあります。特に夏場は熱中症や脱水に注意が必要です。腎臓が血流不足にならないよう、こまめに水分補給をしてください」(同)

 しかし、生活療法を続けるには患者の根気が必要だ。

「生活療法の前に、まず薬をきちんと飲んでもらうことが難しい。処方された薬の半分以上を残している患者さんはけっこういます。このようなことをなくすためにも繰り返し生活指導をおこない、病気を理解してもらうのです」(山縣医師)

 そこで期待されるのが看護師や管理栄養士、薬剤師などの医療スタッフのマンパワーだ。

 山縣医師らが中心となり、全国49医師会が参加しておこなった調査で、医療スタッフが介入し、生活・食事指導や受診の促進などを定期的におこなった群と通常診療だけの群を3年半にわたって追跡し、腎機能の低下速度を調べた。その結果、指導や受診を促進した群のほうが腎機能の低下するスピードが遅かった。

 こうした背景から日本腎臓学会は17年、CKD専門の医療スタッフを作ろうと「腎臓病療養指導士制度」を創設した。18年4月には初回の認定者734人が誕生した。
 要医師は制度創設に関する責任者の一人だ。

受験資格は看護師、保健師、管理栄養士、薬剤師です。CKD全般の知識に加え、例えば薬剤師が栄養、生活指導について学ぶ、というように自分の職種以外の分野について講習や実地研修を通じて学んでもらいます。その上で認定試験に合格した人が資格を得られます。指導士になれば薬剤師さんが薬を渡すときに食事や生活のアドバイスもできるようになります」(要医師)

◯筑波大学病院腎臓内科教授
山縣邦弘医師

◯杏林大学病院腎臓・リウマチ膠原病内科教授
要 伸也医師

(文・狩生聖子)

週刊朝日 6月29日号