しかし体力や抵抗力が低下している高齢者の場合は、重症化して死にいたるケースもある。

「そのようなリスクを回避するためにも、若いうちから唾液の分泌には気をつかいたいですね。唾液が増えれば口の中の細菌が減り、虫歯や歯周病を防ぐこともできます」

 歯周病は糖尿病のリスクを高め、動脈硬化や心臓血管疾患のリスクを高める可能性があるといわれている。

「その歯周病を防ぐということは、糖尿病や動脈硬化を予防することにもつながってくるのです。唾液の分泌を促すことは、健康に長生きするためにとても大事なことなのです」

 そこで植田さんに唾液の分泌を促進する、唾液腺マッサージを教えてもらった。

■唾液腺マッサージで唾液の分泌を促そう!
・耳下腺(じかせん)の刺激
ちょうど頬の中央にあたる部分を、4本の指でマッサージして刺激

・顎下腺(がくかせん)の刺激
「顎下」というのは、顔の“エラ”の下あたり。ここも親指で刺激

・舌下腺(ぜっかせん)の刺激
舌下腺はまさしく舌の下あたりにある。親指であごを下から刺激

「耳下腺、顎下腺、舌下腺。この3大唾液腺を指で刺激して、唾液の分泌を促しましょう。唾液にはサラサラした『サラサラ唾液』とネバネバした『ネバネバ唾液』があります。口の中を洗浄し、中性に保ってくれるのはサラサラ唾液です」

 耳下腺から出る唾液はほとんどがサラサラ唾液だ。

「なので、耳下腺を中心にマッサージをしていただくといいと思います。耳下腺を刺激するには、ちょうど頬の中央にあたる部分を指でマッサージすることです。自分で『口の中が乾いているな』と感じたときは、ぜひやってみてください」

 唾液の分泌量は、加齢とは関係ないという。

「高齢になっても、唾液はたくさん出せます。唾液の分泌不良に関わっていると思われるのは、特定の薬の長期服用やストレスです」

 人はストレスを感じると交感神経が優位になる。交感神経が刺激されるとネバネバ唾液が分泌され、サラサラ唾液の分泌は減少する。

「イライラしたり、怒ったり、悔しがったりしていると、交感神経がどんどん優位になっていきます。そういうときは、口の中もカラカラに乾いたり、ねばり気が強くなるはずです。そんなときには、まずリラックスすることを考えましょう。心身がリラックスすれば、交感神経ではなく、副交感神経が優位になります。副交感神経が刺激されると、サラサラ唾液が分泌されます。口の中の衛生状態を保つには歯磨き等も大事なことですが、『まずはストレスコントロール』ということを覚えておきたいですね」
(赤根千鶴子)

週刊朝日 2018年6月29日号