エリザベス女王 (c)朝日新聞社</p>

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エリザベス女王 (c)朝日新聞社
挙式の日、沿道の歓声に応えるヘンリー王子とメーガン妃=2018年5月19日 (c)朝日新聞社
挙式の日、沿道の歓声に応えるヘンリー王子とメーガン妃=2018年5月19日 (c)朝日新聞社

 エリザベス女王は6月14日、イングランド北西部チェシャー州の都市チェスターなどに公務に出向いた。この時声をかけたのが結婚式を挙げたばかりのメーガン妃だった。当初はヘンリー王子を含めたサセックス公爵夫妻への誘いと受け取られた。ところが、メーガン妃だけだったので驚きが広がった。女王は、妃とのジョイント・ビジットを選んだのだ。

【写真】結婚式でもジバンシィのドレスを着たメーガン妃

 2人は前の晩に王室専用列車に乗り込み、翌朝ランコーン駅に到着した。この列車にはウィリアム王子、キャサリン妃、ヘンリー王子の公務での乗車はまだないとあって、メーガン妃の特別待遇がさらに目立った。2人は、マージー・ゲートウェイ・ブリッジの開通式に出席、沿道の人たちから花束を受け取り言葉を交わした。メーガン妃は肩がケープでおおわれたジバンシィのクリーム色のドレス姿。黒いベルトに合わせて小ぶりのハンドバッグも黒色と、あくまで控えめだった。帰路につくため車に乗り込むとき、メーガン妃が女王の後から乗ろうとしたためモタモタしたが、それ以外は終始仲良く、顔を合わせて笑い声さえ立てたのだった。

 それにしても、なぜ女王はメーガン妃に単独同行を求めたのか。まず、女王は妃にロイヤルマナーを身に着けてもらうには実践教育が最適と考えた。公務の場でのしぐさをよく見て覚えてほしい。今回のスケジュールは、開通式出席、子どもたちのパフォーマンス鑑賞、市庁舎でのランチなどで、忙しいとはいえ典型的な地方公務であることから、よい機会と捉えた。メーガン妃は英王室への適応に意欲的なので、多くを学んでくれるだろう。

 次はダイアナ妃の経験からの反省である。ダイアナ妃は、王室習慣などを女王や夫から教えてもらえないまま公務に引っ張り出された。誰も味方になってくれず、つらかったと後に打ち明けている。それが悲劇につながったのではないか。女王はダイアナ妃から学んだことを決して忘れていなかった。メーガン妃はヘンリー王子以外に家族も友人も身近にいない。誰にも相談できず孤独のまま悩んでいないか。手を差し伸べるなら女王の自分であるとして、顔を合わせて話す機会を設けたのだ。

 さらに、いまだに国内外に存在するアンチメ-ガンの絶滅だ。女王と彼女が絆を深める姿を見せれば、これらの人たちを一掃できるのではないか。最後は女王の年齢だ。92歳の女王は、健康だが高齢であることは間違いない。目の黒いうちに外国人の孫嫁にあれこれ教えたい。メーガン妃の結婚を成功に導くことは、英王室の明るい未来に直結する。自分の亡きあとの王室の安泰を願う女王としては、これこそ自分に課された最後の仕事と捉えたに違いない。女王の国家への思いの深さから2人旅は実施された。メーガン妃も見事に応えたといえるだろう。(多賀幹子)

※週刊朝日オンライン限定記事

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多賀幹子

多賀幹子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京都生まれ。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材。執筆活動のほか、テレビ出演、講演活動などを行う。著書に『英国女王が伝授する70歳からの品格』『親たちの暴走』など

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