石丸:それはいいことなんでしょうか……(笑)。最終的にドラマがDVD化されたんですけどね。僕は松本で仕事をしていて、特急に乗って往復してたんです。ビジネスマンがたくさん乗っている時間帯だったので、皆さんノートパソコンを開いたりしているんですけど、通路を挟んだ席の人が、たまたまパソコンで「半沢直樹」を見ていたんです。そしたら、僕が土下座してるシーンが出てきて……。すぐ横に本人がいるわけですから、新宿まで動けない状態になっちゃいました(笑)。
林:それはそうですよね。
石丸:そのときから「変装しなくちゃ」と思ってヒゲを生やして、なんだか犯罪者みたいな心境でした(笑)。
林:舞台の俳優さんがテレビドラマに出ると、テンションをちょっと落とさなきゃいけないわけですか。
石丸:でも、「半沢直樹」は、堺雅人さんもそうですけど、片岡愛之助さんとか舞台出身の人が多かったので、ふつうのトレンディードラマよりもちょっと劇的な感じでつくってました。
林:舞台のうまい人ばっかりが集まってやってたから、あんなに熱かったんですね。
石丸:みなさんそれぞれのワザを見せながら。だから爽快でした。「倍返し!」とか言って、毎回誰かが吊し上げられてましたもんね。
林:カタルシスがあってスカッとして、すごく楽しかったです。
石丸:僕にとってもある意味運命が変わった作品かなと思いますね。
林:あのあと、舞台のほうのお仕事がやりづらくなかったですか。
石丸:舞台には直接の影響はなかったですけど、映像ではほぼ毎回悪い役が来るようになりましたね(笑)。世の中の人の認識は、やっぱり「悪いやつ」で(笑)。
林:昔からのファンの方に、「イヤ!」とか言われなかったですか。
石丸:非常に戸惑って、「追っかけていたのは王子様だったのに」という声はありました。今でもそういう声はあります。
林:「劇団四季のプリンス」でしたもんね。
石丸:でも、あれをきっかけにああいう感じの役が舞台でもできるかもしれないなと思って、俳優としての幅が広がったというんですか、人間くさい役もできるようになってきたし、よかったなと思ってます。
(構成/本誌・直木詩帆)
※週刊朝日 2018年6月22日号より抜粋