民泊はホテルより割安で、日本の日常生活に触れられると人気だ。しかし、旅館業法は住宅街での営業を認めておらず、住宅の部屋を貸す営業形態を想定していない。これまでは、旅館業法の簡易宿所の許可をとるか、東京都大田区や大阪市など国家戦略特区の地域で業法の例外として認定を受ける必要があった。

 那覇市の2017年の調査では、大手仲介サイト掲載の市内の物件622件のうち、業法の許可を得ていたのは16%の100件。84%の522件が無許可だった。厚生労働省の16年の同様の全国調査でも、約83%が無許可か物件を特定できないなどだった。これまでは無許可営業が大半で、全国約6万件ほどの物件が仲介サイトで登録されていた。

 新法施行が目前の6月1日、観光庁は仲介業者に対し、施行後に適法性が確認できない物件について、予約取り消しや合法物件への変更を求めるように通知した。大手の「Airbnb(エアビーアンドビー)」は、自治体への無届け出物件をサイトから削除。新法施行後には掲載しない方針だったが、前倒しで対応した。“ヤミ民泊”を営む人は、宿泊客集めが難しくなる。

 さらに追加で、適法性が確認できない物件に6月15~19日にチェックインする分の予約は、同社の判断でキャンセルすると決定。代わりの宿泊施設探しや航空券の変更手数料が必要となる人向けに、費用を補填するための約11億円分の基金を設けると決めた。

 政府は違法民泊を取り締まるため、旅館業法も改正。無許可の事業者に対し、都道府県知事の立ち入り検査権限などを設け、罰金の上限を3万円から100万円に引き上げる。観光庁は「予約の取り消しで、旅行者が宿泊場所を確保できない事態にならないよう、情報提供や窓口紹介を進める」という。

 個人の民泊運営はハードルが高くなった一方で、商機をつかむ企業も多い。

 楽天ライフルステイは今月、大阪・心斎橋で相部屋タイプの宿泊施設「Rakuten STAY HOSTEL」の1号店を開業した。同社は民泊物件の仲介サイト運営や、物件保有者のサポート事業を展開している。建物の改修や運営代行を一括して担い、経営ノウハウや楽天ブランドを提供。岩手県や福井県では、空き家利用の民泊施設発掘にも取り組む。太田宗克社長は「様々な宿泊スタイル創出が我々の役割。ほかの事業者とも協力し、市場を大きくしたい」と話す。

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