さらに、何かを頼むときには「具体的に」伝えることも重要。女性は頼み方が下手な人が多いので、意識したい。ただ「手伝って」では夫には伝わらない。何をいつまでにどうするのか、手順を教える必要がある。

「家事をしてこなかった夫は、手伝い方が全くわからない人が多い。子どもと一緒で、育てようという気持ちが必要です。すぐにあれこれできるようになるのは難しいので、一つやったら“本当に助かる、ありがとう”と褒めて」(岡野さん)

 例えば、食器洗い。夫に「洗っておいて」と言った妻は、食器が棚にしまわれた状態をイメージしていても、多くの夫は洗うだけしかやっていない。「何で?」と思ったなら、次からは「洗ったら、ふきんで食器をふいて、棚にしまってもらえたら、私はこんなに助かる」と伝える。できたら「本当に助かった!」と褒める。

「男性には、抽象的な言い方では伝わらないと思って。女性は相手に、言った以上のことを望みがちですが、男性は言われたことしかやらないもの。意識の違いを理解した上で、細かすぎるぐらいに伝えたほうが、お互いにとってスムーズです」(高草木さん)

 なかなか動かない夫には、よその例を持ち出す「引き合い型」も手。「○○さんのご主人、こんなに手伝ってくれて、奥さんがすごい幸せそう。おかげで二人、本当に仲良いらしいよ。うちもそうしたいよね」や「○○さん、旦那さんが何も手伝ってくれなくて、すごいストレスがたまっちゃって、実は離婚間近らしいよ」など、他人を引き合いに出す作戦だ。

「ほかにも、夫に対して、いつも優しい物言いをしている妻は、怒ってみる。その逆に、いつも怒っている妻は、優しく言ってみるなど、今までと逆のやり方を取り入れて、反応を見るのも手です」(岡野さん)

 怒りでは、決して夫を動かすことはできない。妻は、普段の自分の言動をいま一度、冷静になって、見直してみてはどうだろう。人生100年時代、夫婦二人の老後生活が長いことを考えると、お互いが自立しないと大変だ。親の介護が加わってきたら、妻はさらに忙しくなる。何より、夫を自立させるのは、年をとるほど難しい。だから、対策は早いうちに講じるが勝ち、なのだ。(本誌・松岡かすみ)

週刊朝日 2018年6月22日号

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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