日本大学芸術学部。自らを「日藝」と呼び、「我々は日大とは違う!」という自意識に溢れている。入学したことに満足し遊びまくっているわが子の高い学費を、田舎の両親が何も知らずに納めるという……悲しい構図がそこらじゅうに見受けられる親不孝大学。江古田かと思ったら、1、2年次は所沢という騙し討ちに遭い、航空公園駅から学バスに乗るのに片道100円も徴収された。学食は演劇学科のパリピーみたいな人たち(勝手な思い込み)が占領していて、怖くて近寄れなかった。昔は基本的に校舎は出入り自由で、何だかよくわからないホームレスみたいな人がクラブハウスのシャワーを使ったり、中庭で酒盛りをしたりしていた。今は警備員が常駐しそんな様子はないようだ……そんな学校になった。

 そういえば1年だけ予備校に通った。駿台予備学校・柏校。毎日、昼飯は唯一の友達・Tくんと珍満というラーメン屋。野球と相撲とラジオの話しかしなかったけど、楽しかった。成績良好で奨学金をもらったな。前期後期で10万ずつ。母校でお金をくれたのは駿台だけだ。ありがとう駿台。

 え? 母校に寄付? ……そんな身体になってから考えましょう……。また今度ー。

週刊朝日 2018年6月22日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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