遠く離れた親の介護のために帰る道のりは長く、足取りは重い
遠く離れた親の介護のために帰る道のりは長く、足取りは重い
要介護者と介護者の住まい(週刊朝日 2018年6月15日号より)
要介護者と介護者の住まい(週刊朝日 2018年6月15日号より)
状況別 遠距離介護のフローチャート(週刊朝日 2018年6月15日号より)
状況別 遠距離介護のフローチャート(週刊朝日 2018年6月15日号より)
遠距離介護のポイント(週刊朝日 2018年6月15日号より)
遠距離介護のポイント(週刊朝日 2018年6月15日号より)

 親の介護は突然、現実になる。一定の年齢以上になると、いつ病気になってもおかしくないし、転倒して骨折するなど日常生活でもケガのリスクが伴う。遠く離れた実家の親の介護をどうするか。その日のために、今からできる準備をしておきたい。

【遠距離介護のポイントはこちら】

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 東京都在住のテツオさん(仮名・50代)が、香川県に住む母親(80)が大腿骨頸部骨折で入院したという連絡を受けたのは、今年3月。一緒に住む父親(87)は足が悪く、ひとりでの外出は難しい。取るものも取りあえず実家に駆けつけたテツオさんを待っていたのは、地域包括支援センターの担当者だった。

 以前から地域の交流などを通じて両親と接点があったという担当者は、母親の入院中に両親の要介護認定を取ることを提案。審査を受けると、父親が「要支援1」、初期の認知症もある母親が「要介護1」と認定された。

 母親が退院したのは5月初旬。テツオさんはゴールデンウィークを実家で過ごし、介護保険サービスで受けられる福祉用具の貸与や訪問介護、ケアマネジャーとの契約などの対応に追われた。

「どれくらいの頻度で実家に帰ればいいのかわからないし、車やゴミ出しなども心配で……」

 とテツオさんは言う。

 離れて暮らす親の介護をどうするか。子どもは働く場所に近い都心部に住み、親は地方の実家に住む、テツオさんのようなケースは、いま多いだろう。

「遠距離にいる親に介護が必要になったとき、多くの方がまず考えるのは、親を自宅や自宅近くの施設に呼び寄せるか、Uターン介護をするか、です」

 こう話すのは、離れて暮らす親のケアをする人たちを支援するNPO法人パオッコ理事長の太田差惠子さんだ。月に1回当事者が集まり、情報交換をしたり悩みを語り合ったりするサロンを開催している。

 良かれと思って選択しがちな、呼び寄せや、実家に帰るUターン介護。実は、それらはできるだけやめたほうがいいと専門家は口をそろえる。4年以上にわたって遠距離介護を続けてきた、ノンフィクションライターの中澤まゆみさんは、その理由を説明する。

「例えばUターン介護の場合、今までほどよい距離で付き合ってきた親子の関係性が変わってしまう。また親の呼び寄せでは、親にはそれまで積み上げてきた生活があり、長年の友人も失うので、見ず知らずの土地で新しい生活を始めるのはストレスが大きい。いずれにしても、介護トラブルの元になります」

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