【文豪の湯宿】従業員と囲炉裏を囲んで釣り談義 開高健の原動力 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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【文豪の湯宿】従業員と囲炉裏を囲んで釣り談義 開高健の原動力

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鈴木裕也週刊朝日

眺めがいい部屋よりも、窓が一つしかない2階の隅の「八号」を好んだ

眺めがいい部屋よりも、窓が一つしかない2階の隅の「八号」を好んだ

文豪が釣りの後に体を温めた「虹マス風呂」

文豪が釣りの後に体を温めた「虹マス風呂」

中央のニジマスの石像から源泉かけ流しの湯が流れ出る

中央のニジマスの石像から源泉かけ流しの湯が流れ出る

 文豪たちの作品に登場する温泉宿を訪ねる連載「文豪の湯宿」。今回は「開高健」の「環湖荘」(群馬県・丸沼温泉)だ。

【宿自慢の大浴場「虹マス風呂」の写真はこちら】

*  *  *
 ツイードのスーツの上からポンチョを羽織り、開高健は毎朝、環湖荘の目の前に広がる丸沼湖にニジマスを釣りに出かけた。夏でも寒いほどの高原で長時間釣り糸を垂らしたのち宿に戻ると、宿自慢の大浴場「虹マス風呂」で冷え切った体を温めた。

 昭和44年3月に開高が初めてこの宿を訪れたのは、釣りが目的だった。前年から釣りに関する連載をスタートさせるほど熱中していたのだ。風呂後の食事は一般客とともに取り、食後は従業員の宿泊所で囲炉裏を囲んでチビリチビリと酒を飲みながら釣り談議に明け暮れたという。

 開高はこの宿を「年に何度でも長期間逗留したくなる」と評した。事実、平成元年に亡くなるまで「たぶん15回ほどいらしてます。ほとんどが釣りのためでした」(井上勝支配人)というほど通いつめた。

「人の目に入るのが嫌」だと、眺めのいい部屋を避け、2階隅の部屋を好んだ。長逗留しても「ゴミでは死なないから」と、掃除の従業員さえ部屋に入れなかったため、この宿で原稿を執筆したかどうかはわからない。だが、この宿での釣りが作家活動の原動力だったことは間違いない。(文/本誌・鈴木裕也)

■環湖荘(かんこそう)
群馬県片品村東小川4658-7

週刊朝日 2018年6月15日号


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