別の私大関係者は、田中理事長が10年間トップに居続けたことで、体育会の「上意下達」の組織文化がより鮮明になったと指摘する。

「かつては大学内でも権力闘争があり、問題があれば責任を追及する動きがあった。今は田中氏を頂点とする体制が確立しているので、誰も逆らえない。この組織文化を変えるには、外部から人を招くなど、抜本的な改革が必要です」

 安倍一強となった、今の自民党にそっくりなのだ。

 元法学部教授で、現在、日大大学院講師の船山泰範弁護士はこう話す。

「残念だけど日大は腐敗体質だったと思う。もともとあった問題が“タックル”をきっかけに露呈してきたに過ぎない」

 具体的には大学職員による支配体制を挙げる。

「大学の経営陣が職員出身者ばかりに牛耳られています。(辞任した内田前監督を含め)5人の常務理事のうち4人が職員出身者。かつては教員出身者が理事長になっていた。大学教育がないがしろにされているから、こういうことが起きたんだと思います」

 船山氏はかつて日大の評議員を務めたが、自由な議論はできなかったという。

「評議員は100人ほどいて、理事長が主催します。ところが評議員会ではほとんどの人が発言しない。私が予算などについて発言をしようとして封じられたこともありました。『議事進行』などと口をはさんでやめさせようとする人がいるのです。理事長の取り巻きが、発言させないようにしているのだと思います」

 船山氏は法学部で刑法などを教えてきた。法律の専門家として、タックル問題では内田前監督や井上奨前コーチが立件される可能性が十分あると見ている。

「捜査当局まかせではなく、これをきっかけにやり直せばいい。現在の執行部が全員やめて、新しい民主的な体制を築くべきです」

 卒業生や在校生らの間にも体制の一新を求める声は広がっている。第三者委員会の結論が出れば田中理事長が会見するとの見方もあるが、2カ月近くかかる。委員会の調査の範囲や手法もはっきりしない。アメフト部の現役選手は疑問を感じている。

「第三者委員会など設置しなくても、選手に当時のことを聞けばはっきりする」

(本誌・緒方麦、上田耕司、多田敏男/今西憲之、西岡千史)

週刊朝日  2018年6月15日号より抜粋

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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