【文豪の湯宿】野坂昭如ゆかりの宿 学友と酒と短歌と… 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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【文豪の湯宿】野坂昭如ゆかりの宿 学友と酒と短歌と…

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鈴木裕也週刊朝日
野坂昭如、阿部牧郎の2人の直木賞作家と「歌仙をまいた」際の句が残る

野坂昭如、阿部牧郎の2人の直木賞作家と「歌仙をまいた」際の句が残る

この岩風呂で、野坂昭如は小説の構想を練ったという

この岩風呂で、野坂昭如は小説の構想を練ったという

 文豪たちの作品に登場する温泉宿を訪ねる新連載「文豪の湯宿」。今回は「野坂昭如」の「海潮園」(鳥取県・皆生温泉)だ。

【写真】野坂昭如が小説の構想を練ったという岩風呂はコチラ

*  *  *
 野坂昭如と海潮園の先代当主は早稲田大学の学友同士。その縁で、たびたび宿泊した。朝まで飲み明かしては次々と上の句、下の句を詠み合い、それを巻紙に書き写す「歌仙をまく」遊びが定番で、野坂は気に入った句を色紙にして宿に残した。

 野坂には皆生(かいけ)温泉を舞台にした作品が数点ある。風呂番の老人が人生観を語る短編「色即回帰」は、同宿の岩風呂で構想した。先代当主も登場する短編「皆生温泉の巫女ヌード」は空路開通で街がにぎわった時代、地域のヌードダンサーを集めてヌード騎馬戦を企画した実話風の物語。

 現当主の中島太郎さんも父の旧友との縁は大切にしている。大学進学の際の身元保証人を引き受けてくれたお礼を言うために、父とともに野坂邸を訪れたときのこと。3人は寿司屋に繰り出し、昼の3時から深夜まで延々とビールを飲み、歌仙をまき続けた。ところがいざ支払いとなり、誰も持ち合わせがないことが判明。酔った父と恩人に後を任された太郎さんは、学生証を担保に残し、翌日再訪して支払ったという。

 宿には父子ともに世話になった恩人ゆかりの品が多数残されている。

(文/本誌・鈴木裕也)

■海潮園(かいちょうえん)
鳥取県米子市皆生温泉3‐3‐3
 
週刊朝日  2018年6月8日号


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