日本精工のグループ企業は昨年、自社のベアリング技術を生かして高性能のハンドスピナーを開発した。一般的な市販品だと回転時間が8分ほどだが、同社の品は12分以上回る。数量限定品で、開発はベアリングをPRする広告宣伝的なねらい。技術力を生かし、日本精工は本業の自動車向けなどのベアリングが堅調で大幅増益だった。

 国内の自動車販売で昨年度に断トツだったのは、ホンダの軽自動車「N―BOX」。年間約22万3千台を売り上げ、2位のトヨタ自動車「プリウス」の約14万9千台を引き離した。

 小回りがきいて運転しやすく、維持費も安い軽自動車。国内新車販売の4割近くを占める。日本自動車工業会がまとめた使用実態調査によると、中心ユーザーは60歳以上と女性で増加傾向。買い物や通勤などで毎日使う人が約8割に達する。

 N―BOXは軽自動車ながら居住空間が広い。助手席が大きくスライドするシートで57センチも動かせる(従来品は24センチ)など、使い勝手がよくなった。昨夏にフルモデルチェンジし、走りも良くなって幅広い顧客層に受けた。米国の法人税率引き下げもあり、ホンダは純利益が初めて1兆円を超えた。

 昨年の猛暑や害虫騒動が追い風になった企業もある。井村屋グループは、和風アイス「あずきバー」の販売数が過去最高に。フマキラーは、ヒアリやマダニなどの被害が話題となった影響で殺虫剤販売が伸び、大幅な増収増益となった。

 こうした好調企業の一方で、業績悪化に苦しむ企業もある。代表格は銀行で、福島銀行は赤字決算だった。

 低金利で貸出金利息が減ったことなど業界共通の要因に加え、福島第一原発事故の被災地ならではの苦境もある。復興需要がピークを越し、これから経営難に陥る取引先が増える恐れがあるとみて、貸し倒れ引当金を予防的に計上したことだ。日本銀行出身の森川英治社長が引責辞任し、同県内のライバル・東邦銀行元専務の加藤容啓氏が後任に就く異例の人事を決めた。

 シェアハウス関連融資が問題化したスルガ銀行(静岡県)も、貸し倒れ引当金を積み増して業績が悪化。低価格のラーメンチェーンの幸楽苑HDは、不採算店が増えて大幅な赤字決算に。本社を置く福島県から活発に全国展開してきたが、客足の衰えや人件費高騰が響いた。

 三菱重工業は、子会社が製造する小型ジェット旅客機「MRJ」の開発費負担が高まり、大幅な減益。リコーは海外事業の不振で、過去最大の赤字となった。

 SMBC日興証券のまとめによると、東証1部上場主要企業の18年3月期決算は、純利益が前期比約25%増(除く金融、5月15日公表分まで)。19年3月期は純利益が2%減と見込む。

 経営環境はやや先行き不透明となってきたが、ヒット商品が出れば売上高が伸びるだけでなく、社員の士気も高まる。消費者の利便性や満足感も向上する。博報堂生活総合研究所はネット調査をもとに、「生活者が選ぶ2018年ヒット予想」をまとめている。今年はどんな商品がヒットするだろうか。(本誌・浅井秀樹)
 
週刊朝日  2018年6月8日号