■柴犬


小型犬:体高 オス38~41センチ、メス35~38センチ/体重 7~11キロ
6犬種のうち最も小型で、日本犬全体の80%を占める。うち、赤毛(茶褐色)が80%で、黒毛は目の上に「四つ目」と呼ばれる斑点があることが多い。ほか、赤胡麻、少ないが白毛も。産地によっておおまかに、美濃柴、信州柴、山陰柴(石州犬)、秋田柴(縄文柴)の4系統にわけることができ、そのなかで山陰柴だけ祖先に隔たりがあることが、遺伝学的研究で判明している。全国に分布する小型日本犬に「柴犬」の名がついたのは大正年間と言われ、丈の低い雑木「柴」が由来とされるが、その理由ははっきりしない。

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 国の天然記念物に指定されている日本犬6犬種に共通する特徴は、三角の立ち耳に、太い巻き尾か差し尾、そして野性を感じさせる顔つき。こうした外見がadorable(愛らしい)と絶賛され、海外で人気が上昇している。剛毛(表毛)と綿毛(下毛)から成る二重被毛も、fluffy(ふわふわ)で、たまらないらしい。

 だが、日本犬は、見た目より精神性が重要視され、第一条件として「悍威、素朴、良性」が挙げられている。つまり、「度胸があり、誠実で素直な、飼い主への忠誠心あふれる性質の良さ」が魅力なのだ。

「日本犬は本当にご主人だけになつくんです。それが、誰にでもしっぽを振る洋犬との最大の違いでしょう」と岩合光昭さん。「撮影するときも、日本犬には『この人は飼い主に信頼されている』と思ってもらうことが大切なんですよ」

「HACHIのような“忠実な友人”がほしい」と秋田犬を母親にねだったという平昌五輪フィギュアスケート女子の金メダリスト、ロシアのアリーナ・ザギトワ選手は、日本犬の魅力をよく理解していることになる。

 COOL JAPANの筆頭がNihon-Inuになる日も近い?(取材・文/本誌・伏見美雪)

岩合光昭(Mitsuaki Iwago)
1950年、東京都生まれ。「週刊朝日」の連載「今週の」でもおなじみの、世界的な動物写真家。野生動物や猫を撮りつづける一方で、天然記念物の指定を受けている日本の6犬種すべてを折に触れて撮影している。『ニッポンの犬』『しばいぬ』『いぬ』『ボサノバ・ドッグ』『ねこといぬ』など犬の写真集も多数。

※日本犬の特徴や見分け方には諸説あり、この記事では主に、『日本犬のすべて』(日本犬保存会)および『日本の犬 人とともに生きる』(東京大学出版会)を参考にしました。

週刊朝日 2018年6月8日号