企業統治の専門家は、社外取締役の重要性を指摘する。NPO「日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク」の理事長で作家の牛島信弁護士は、社外取締役は辞表をいつでも用意しておくぐらいの心構えが求められるという。

「社外取締役は社内に常駐しておらず内情に精通するには限界があるため、不正を見つけるのは簡単ではない。だからこそ不正があった場合、自分の提言が受け入れられなければ抗議の意味を込めて、辞表をたたきつけて辞める覚悟が必要だ」

 現実はどうだろうか。不正に辞職覚悟で抵抗したという官僚OBの話は、ほとんど聞こえてこない。むしろ、取締役としてはあまり発言せず、不正があっても見抜けなかったという事例が目立つ。

 今回の取材で複数の官僚OBに話を聞いたが、「取締役としての責務は果たしている」と言いつつ、報酬や仕事内容についての説明は避けようとしていた。天下り批判にも正面から反論せず、「できるだけ目立ちたくない」(財務省OB)のが本音のようだ。

 いまのままでは、新たな「天下り先」になっていると言われても、仕方ないのかもしれない。(朝日新聞記者・座小田英史、朝日新聞編集委員・堀篭俊材)

週刊朝日 2018年6月8日号より抜粋