高い報酬を出しても民間企業が官僚OBを求めるのには訳がある。官公庁は様々な法律や規制を通じて、企業を監視・監督している。企業にとって取り締まる側にいた官僚OBの経験や知識は役に立つ。官公庁に勤める後輩たちなどの人脈も魅力的だ。

 官僚OBを社外取締役として複数招いている企業もある。中には、社外取締役の全員が官僚OBというところも。大手商社の伊藤忠商事は、4人の社外取締役が元経産省次官の望月氏、村木厚子・元厚労省次官、藤崎一郎・元駐米大使、川北力・元国税庁長官という“大物OB”だ。

 主要官庁のOBともなれば、元の役所はもちろん海外の政府要人らとのネットワークも築いている。「役所と交渉する際のパイプ役としても必要な人材」(大手商社の関係者)との見方もある。

 伊藤忠は取材に対し、「出身は関係ない。人格や見識などに優れた人にお願いしている」と回答した。(朝日新聞記者・座小田英史、朝日新聞編集委員・堀篭俊材)

週刊朝日 2018年6月8日号より抜粋