今は、日大のアメリカンフットボール問題が連日メディアを騒がしており、社会現象ともなっている。私も「ケンカ投法」などと呼ばれ、死球数の日本記録を持っているが、「当ててやる」と思って顔面めがけてめいっぱい速球を投げたことなどない。野球はコンタクトスポーツではないし、投手と打者には18.44メートルの一定の距離がある。だから、同じスポーツでも、今回の一連の騒動を語ることは難しいし、完全に理解することは難しい。「言った」「言わない」の部分は、なおさらである。

 ただ、一つ言えることは、ルールを無視すれば、それはスポーツではなくなるということ。そして、指導者と選手という立場において、会社で言えば上司と部下という関係において、受け取る相手(選手や部下)がどう感じるかが大事である。経験豊富な指導する立場の人間が部下をどう導くのかが「指導力」である。仮に間違った形で伝わっているのなら、すぐに正す必要があるし、それがルールを逸脱するものであるのなら、即座に過ちを指摘しなければならない。ルール順守が第一であることは、スポーツも、社会も同じであろう。

 野球界、広く言えばスポーツ界に身を置く人間として、その点だけは肝に銘じなければと思う。

週刊朝日 2018年6月8日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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