片岡鶴太郎(かたおか・つるたろう)さん/俳優・画家。2012年からヨガを始め、17年にインド政府から、ヨガマスター、ヨガインストラクターの称号を授与される。著書『心の中に「静」をもつ』(サンマーク出版)が話題に。(撮影/写真部・小原雄輝)
片岡鶴太郎(かたおか・つるたろう)さん/俳優・画家。2012年からヨガを始め、17年にインド政府から、ヨガマスター、ヨガインストラクターの称号を授与される。著書『心の中に「静」をもつ』(サンマーク出版)が話題に。(撮影/写真部・小原雄輝)
「更年期は自分の原点を見つめ直す時期。『進化』であり『深化』の時期なんです」(撮影/写真部・小原雄輝)
「更年期は自分の原点を見つめ直す時期。『進化』であり『深化』の時期なんです」(撮影/写真部・小原雄輝)
イライラやストレスが消えていく運動を毎朝の習慣に!(週刊朝日 2018年6月8日号より)
イライラやストレスが消えていく運動を毎朝の習慣に!(週刊朝日 2018年6月8日号より)

 片岡鶴太郎さんは実際40代後半に更年期障害に悩まされたことを、著書『心の中に「静」をもつ』の中で告白している。

【イラスト】片岡さんが毎日実践している“ヨーガの準備運動”はこちら】

「今から15年前、48歳のころですね。40代は絵を一番描いていて、それなりの評価もいただいていました。でも絵を描くことが当たり前になってくると、『この先どうなるのだろう』と不安になってくる。不安で自信がないから、自分を卑下する。そして他人を恨んだり妬んだり。カッコ悪いったらなかったなあ」

 そして50代になると、

「下からは若い人たちがどんどん突き上げてくる。上には余裕と貫禄のある先輩方がドンと構えている。その板挟みになって、閉塞感に押しつぶされそうになりました。もう毎日、鉛をのまされているような“どんより感”が自分の中にあって。『だめだ、これはやばい』と思いましたよ」

 そこで30代前半の一時期に通っていたボクシングジムに再び通い始め、思いきり体を動かすようにした。

「体をとことん疲れさせ、気持ちを無にし、ベッドで寝るときは何も考えないようにしたんです」

 でもどうやってもネガティブな気持ちは湧いてくる。

「寝る前にお風呂に浸かっているときに『なんだ、誰からも何も誘われないな。俺、ひとりぼっちだな』と。しかし落ち込み始めたらキリがないので、私は自分自身に暗示をかけるようにしました。『安心しろ。俺はツイてる。俺は大丈夫』」

 そして次に、流行を拒否する気持ちも改善した。

「年を重ねてくると話題になっているもの、ブームになっているものをついつい否定しがちです。でも亡くなられた漫画家のいわしげ孝さんに言われたのですが、松尾芭蕉の理念『不易流行』が大事なんですよね。不易(不変の真理)と流行(日々変化していくもの)の両方を知ってこそ、新しいものが見えてくることがあるのです。そう考えたら今までの自分の“否定的な態度”自体を見直す気持ちになりました。否定をするから孤独になる。孤独になるから他人を妬み、うつ状態からも抜けられなくなってしまうのです。すべてを肯定的に受け入れ、前向きな姿勢で対処しよう。そう思い始めたところから、更年期障害を抜け出すきっかけがつかめたように思います」

 気持ちが完全に安定してきたのは54歳のころだ。「サザエさん」の実写版テレビドラマで、波平役がきた。

次のページ