「選手と口をきかない」監督の代わりに選手とやりとりをするのがコーチになるわけだが、その位置に就くのは“悲願”とも言える。内田前監督の参謀であり、今回の騒動で辞任した井上奨(つとむ)前コーチは日大豊山高校アメフト部の監督も兼務する。付属校のコーチからすれば、「日大の職員」の座も手に入れられる大学アメフト部への「昇格」を目指しているという。

 付属校に子供を通わせていたある女性はこう教えてくれた。

「息子のチームには、フェニックスOBのコーチが7人いました。企業の社員(休日専用コーチ)もいれば、実家の自営業を手伝う人、フリーターもいました。付属校アメフト部のコーチになれば、内田さんに会える機会が増える。自分が育てた選手が活躍すればアピールできる。日大職員にもなれるかもしれない」と淡い期待を寄せていたという。

 関学大、日大の両関係者らによる会見や声明発表が続く中、日大の現役アメフト部員からは父母会に助けを求める声があったほか、自らも声明文を出そうとし、“クーデター退部”の動きもあったという。大塚学長は会見で、アメフト部の永久停止について「考えていない」と述べたが、後手後手の大学の対応にしびれを切らして退部を検討する部員の動きもあったという。

 全治3週間のケガを負った関学大選手側が大阪府警に被害届を提出。捜査は警視庁に移る予定だ。刑事事件になった場合、誰にどのような罪が科されるのか。京大アメフト部OBの西村友彦弁護士は次のように説明する。

 まずアメフトというスポーツは「ぶつかる相手が負傷してもかまわない」という未必の故意をもってプレーしているため、傷害罪(15年以下の懲役か50万円以下の罰金)の構成要件を満たしているが、刑法第35条で「法令又は正当な業務による行為は、罰しない」ため、ルールにのっとった行為であれば、違法性がない正当な行為(正当業務行為といわれる)とされる。

 しかし、今回のタックルは「一見して明らかに不必要で、相手にケガをさせるためだけにした、と客観的に受け取られかねないような行為」であり、捜査機関は「傷害罪として立件可能と判断をするだろう」と、西村弁護士は話す。

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