東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
5月9日の西武戦で力投したソフトバンク石川(c)朝日新聞社
5月9日の西武戦で力投したソフトバンク石川(c)朝日新聞社

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、5~6月を各チームの監督が戦力の最大化を図るべく画策する時期だとして、その動向や課題を解説する。

【写真】5月9日の西武戦で力投したソフトバンク石川

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 プロ野球は開幕から40試合前後を消化した。この時期に監督が考えることは、オープン戦終了から本番に入り、実績ある選手、新しくレギュラーとして抜擢(ばってき)した選手がしっかりと軌道に乗れているかどうか。1カ月たっても浮上の目がない場合は、何らかの手を打たねばならない。

 開幕から我慢して起用した選手の打順変更、若手とベテランの入れ替えなどだよね。特に下位にいるチームは手を打たないとズルズルと行く。「育成」と「勝つこと」の両立を考えた場合、一番難しい時期にあるのが今だと思う。

 ただ、忘れてはいけない立ち位置として、秋の優勝争い時にどれだけ戦力を最大化できるかという点がある。若手を2軍に落とすこと、それは昨年からの戦力の上積みを放棄することにもつながりかねない。監督の「我慢」と「覚悟」が試される時期でもある。

 試合の中での交代もその一つ。勝負どころで代打を送るか、投手交代はどうするか。監督としてのビジョンが問われる。例えば5月9日の西武―ソフトバンク戦。ソフトバンク先発の石川は七回まで無失点。中5日の登板で100球を超えていたが、工藤監督は八回も託した。翌10日は試合がなく、救援陣も投入できる状況だったが続投させた。ここには、石川に完投というものを意識させる思いが込められていると感じた。昨年8勝を挙げ、今季はチームの主力投手となってほしい存在。その投手に完投に対するメッセージを、起用の中に込める。その積み重ねが選手をさらに育てていく。

 開幕から打線が驚異的な得点を重ねてきた西武に一時期の勢いがなくなり、パ・リーグは西武、ソフトバンク、日本ハムの上位3球団の差が詰まってきた。ソフトバンクは内川、デスパイネが本調子でなくとも、この位置にいる。日本ハムも清宮の起用を続けながら勝利を重ねている。レギュラー野手の戦力が固定化されている西武も、この時期に投手力をしっかりと整備して戦いながら「戦力の底上げ」を図っていくことが大事になる。

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東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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