まさに、昭恵夫人の意向を受け、本省に問いただしているのである。

 田村氏は、<財務省として、現行ルールのなかで最大限の配慮をしている>と説明し、谷氏に納得してもらったことが書かれている。

 また2014年6月17日、近畿財務局の<応接記録>には、鴻池祥肇参院議員秘書との会話が記されていた。 

 そこには鴻池氏の秘書から<いついつ、だれだれが来た(注・総理夫人の現地訪問を指す)などの報告もあった>と森友学園や、その依頼を受けた政治家が安倍首相や昭恵夫人の名前を出して交渉していた様子がわかる。

 2014年5月8日付で近畿財務局は、森友学園の国有地取得について財務省に<本省相談メモ>を送付した。そこには<本件経緯>というタイトルで時系列の説明がつけられており、<打合せの際、「本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し夫人からは『いい土地ですから、前へ進めてください。』とのお言葉をただいた。」との発言あり(森友学園籠池理事長と夫人が現地の前で並んで写っている写真を提示)。

と昭恵夫人が、関与している写真という「ブツ」まで近畿財務局に示していることを、財務省本省に報告しているのだ。

 そこには、森友学園の籠池理事長のプロフィールや名刺などもつけられており、昭恵夫人だけでなく、衆院議員の中山成彬氏や平沼赳夫氏らが森友学園で講演していることを<来訪状況>として伝えている。

 近畿財務局関係者はこう話す。

「今、加計学園の問題で愛媛県文書では『首相案件』という言葉がよく出ています。近畿財務局からすれば、森友学園の国有地問題はまさに『首相夫人案件』ですよ。だから、普通では出さない<相談メモ>を何度も財務省本省に出している。公務員なら絶対にやらない、公文書改ざんも、財務省本省から言われてやらされた。改ざんを命じられ自殺に追い込まれた職員のためにも『首相夫人案件』がおかしなものだったのか、真実を知りたい、明かしてほしい」 

 一方、詐欺罪などで起訴された前理事長の籠池泰典被告と妻の諄子(じゅんこ)被告について、大阪地裁が23日、保釈を認める決定をしたという。弁護人によると、保釈金はそれぞれ籠池被告が800万円、諄子被告が700万円だという。

 籠池夫妻がシャバに戻ってくれば、今度は「首相夫人案件」疑惑が再燃することは必至だ。(ジャーナリスト・今西憲之)

※週刊朝日オンライン限定記事

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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