千葉や愛知も自動車盗が多く、かつては全国ワーストの年があった。しかし、取り締まりを強化するなどして件数が減ったため、16年以降は茨城が認知件数の全国ワーストに。茨城県は17年4月、ヤードの経営者の届け出義務化や警察官の立ち入り権限を強化した条例を施行した。県警も不正ヤードや自動車窃盗犯の動向に目を光らせている。

 茨城の17年の侵入盗約4千件のうち、半数超が住宅を対象にした犯行。空き巣や就寝時に侵入する忍び込みなどの手口だった。県警は「茨城は農業県で、住宅が点在する地域も多い。1戸あたりの敷地面積も広い」とみる。

 確かに、敷地面積は平均425平方メートルと全国1位(総務省「統計でみる都道府県のすがた2018」)で、総農家数は約8万8千戸と全国2位(農林水産省「2015年農林業センサス」)。住宅が大きく、密集していない環境が侵入盗を誘発するのだろうか。

 茨城以外の侵入盗が多い県も、農業が盛んな地が比較的目立つ。人口あたりの侵入盗件数2位の愛知は、総農家数全国6位。福岡は同17位、千葉は同10位、岐阜は同13位だ。

 次に、殺人や強盗などの凶悪犯、強制わいせつなどの性犯罪の傾向をみよう。

 強盗の人口10万人比の認知件数をみると、大阪・東京・埼玉など上位10都府県はいずれも人口250万人以上。一方で、殺人をみると、沖縄・和歌山・高知・香川・愛媛と、人口150万人以下の県もワースト10に入る。

 犯罪件数は全国的に減る一方で、強制性交などの性犯罪は増える地域もある。強制わいせつの17年の認知件数は、全国で前年比6%減の約5800件。ただ、京都・兵庫・埼玉・宮城など23府県は前年より多い。

 京都府警は、窃盗や性犯罪の発生時間帯や場所をコンピューターで予測する全国初のシステムを、16年10月から運用し始めた。過去の捜査情報や統計データと犯罪理論を組み合わせて分析し、最適な街頭パトロールの経路をパソコンの地図上に示す。

 こんな実績もある。ある川沿いで性犯罪発生の可能性が高いとのデータが示され、警察官が付近を巡回。女性を対岸から盗撮する男を見つけ、検挙にこぎつけたという。府警刑事企画課は「警察官の現場経験も融合し、システムの精度を高めたい」としている。

 社会の高齢化に伴い、65歳以上の人が被害に遭ったり、容疑者として検挙されたりするケースも増えた。

 直近10年でみると、詐欺の被害に遭う人と窃盗の罪を犯す高齢者が特に増えた。16年に万引きで検挙された全国約7万人のうち、38.5%の約2万7千人が65歳以上。16年の国内人口の高齢化率27.3%に比べ、大幅に高い。

 振り込め詐欺などの特殊詐欺は、65歳以上の被害が全認知件数の7割超にのぼる。17年には全国で約1万8千件発生。青森・山梨・愛知・香川・宮崎の5県で被害額が5割以上減った一方で、東京・埼玉・千葉・神奈川など大都市圏を中心に16都道府県は認知件数と被害額がいずれも前年より増えた。

 和歌山県は人口の3割超が65歳以上で、全国で7番目に高齢者比率が高い。県警によると、17年に刑法犯で検挙された1937人のうち約26%の503人が65歳以上。13年は約21%だったため、約5ポイント上昇している。

 503人のうち、285人が万引きでの検挙。容疑者の取り調べや他県の調査データなどから、一人暮らしの孤独感や経済的困窮が背景にあると、県警はみている。このため、今春から県や市町村と協力し、万引きで検挙された高齢者に対し、生活支援の窓口紹介や警察官による自宅訪問などのきめ細かな対策に乗り出した。崎口忠・犯罪抑止総合対策室長は「一歩踏み込んで高齢者に寄り添うことで、安心して暮らせる地域づくりにつながる」と話す。

 犯罪の抑止には、経済的な安定や地域のつながりなど様々な要因が結びつく。関係者が力を合わせ、地域の「犯罪格差」が縮小することを願いたい。(藤嶋亨)

週刊朝日 2018年6月1日号