DMNが過剰になると脳の消費エネルギーが増大する。他のことにエネルギーを使えなくなるため、外部からのストレスにしなやかに対応できなくなる。体の反応も鈍ることから、免疫やホルモン、自律神経などさまざまな機能に影響を及ぼし、病気をこじらせやすい状態を作ってしまう。

 この過剰なDMNを静めるのが先のバランス脳作り。マインドフルネスや瞑想などとともに久賀谷医師が勧めているのは、「ときどき思考回路を止める」「今この瞬間にいることを感じる」「運動をする」「睡眠をとる」「善行を積む」という習慣だ。

「思考回路を止めることは、脳をリセットするために必要。携帯電話の電源を切って、今いる環境から少し離れてみましょう。また、過去を気に病んだり、未来を不安に思ったりすることは脳への負担が大きい。今この瞬間だけに集中する習慣をつけることで、脳のバランスが整いやすくなります」(同)

 身体の不調を生じる大きな要因の一つが“脳疲労”だ。『本当に強い人、強そうで弱い人』(講談社+α文庫)の著者で、川村総合診療院(東京都港区)理事長の川村則行医師は、「うつ病患者さんのほとんどが疲労感を訴える。でも疲れているのは身体ではなく、脳なのです」と話す。

「脳は筋肉みたいなもので、酷使をすれば酸素や栄養が不足して疲れますし、限界を超えれば細胞死を招きます」(川村医師)

 その結果生じるのが、うつ病などの精神疾患だという。川村医師は、うつ病患者の血液中には幸福感をもたらす神経伝達物質に関わる「PEA(血漿【けっしょう】リン酸エタノールアミン)」の濃度が低下していることを発見。PEA検査はうつ病を判定するバイオマーカーとして、一部の医療機関で使われている(健康保険対象外)。

 脳疲労を招く要因としては、日々のハードワークやストレス、睡眠不足などが挙げられるが、川村医師は「共通するのは、決めたことを実行する力の弱さ」だと話す。

「夜に化粧を落とすとか、寝る前にスマホを見ないとか、そういうささいなことでも、『疲れたから』『やめられないから』といった理由でなおざりにしてしまう。それが睡眠不足や不安、後悔などにつながり、脳疲労が蓄積していく。決めたことを実行できないから脳が疲れ、脳が疲れるから実行できないという、悪循環に陥ります」(同)

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