礼拝堂の長い歴史を持つ聖歌隊がこのたび歌ったのは、1960年代にアメリカのアフリカ系のソウル歌手がヒットさせた「スタンド・バイ・ミ-」。自分のルーツを尊重したいとするメーガンさんの考えからだった。ウエディングケーキも従来のドライ・フルーツケーキを健康的ではないと否定、オーガニックレモンとハーブを取り入れる斬新さだった。メーガンさんは結婚前から王子に、禁煙はもとよりアルコール量を減らし、ジムに通うよう勧めていた。長男よりも縛りのゆるい次男の立場を存分に生かして、これまでの英王室としては想像もできない挙式になった。まさに、メーガンのメーガンによるメーガンのための結婚式だったと言えそうだ。

イギリスはEU(欧州連合)からの離脱を決定したものの、その複雑な交渉過程は混乱を引き起こしている。移民の数に制限を設け、多くの人種が混じる社会に歯止めをかける方向にある。アメリカのトランプ大統領は「アメリカ・ファースト」を声高に叫ぶ。この結婚式は、それに一矢を報いるかのように多文化を積極的に認めるシンボルになった。

 イギリス国民から肯定的に受け止める声が高いものの、「あまりに伝統から外れてしまった」「イギリスの慣習がアメリカ文化の侵略で破壊された」との批判も出ている。ヘンリー王子とメーガンさんは女王からサセックス公爵夫妻の称号を得た。イギリスとしては珍しい五月晴れに恵まれた結婚式だったがその余韻に浸る間もなく、2人はハネムーンを延期してさっそく公務に励む。イギリス国民に遠慮なく自分らしさを打ち出して衝撃を与えたメーガンさん。公爵夫人としての次なる一手が注目される。(多賀幹子)

※週刊朝日オンライン限定記事

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多賀幹子

多賀幹子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京都生まれ。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材。執筆活動のほか、テレビ出演、講演活動などを行う。著書に『英国女王が伝授する70歳からの品格』『親たちの暴走』など

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