ビートニクスとして5枚目となるオリジナルアルバムを出した鈴木慶一(左)と高橋幸宏
ビートニクスとして5枚目となるオリジナルアルバムを出した鈴木慶一(左)と高橋幸宏
THE BEATNIKSの新作『EXITENTIALIST A XIE XIE』
THE BEATNIKSの新作『EXITENTIALIST A XIE XIE』

 高橋幸宏と鈴木慶一のロック・ユニット、THE BEATNIKS(ザ・ビートニクス)の新作『EXITENTIALIST A XIE XIE』が凄い! 卓越した演奏技術、明快な音像の素晴らしさに打ちのめされた。収録曲の随所に2人が親しんできた音楽へのオマージュが織り込まれ、それを解き明かす楽しみもある。

【新作『EXITENTIALIST A XIE XIE』のジャケットはこちら】

 高橋はサディスティック・ミカ・バンド、YMO、鈴木ははちみつぱい、ムーンライダーズと、いずれも日本のロック史に残るグループで活躍してきた。それぞれソロ活動をしながら、高橋はpupaを経て、現在はMETAFIVEを率いる。鈴木はControversial Sparkを結成し、音楽プロデュースや映画音楽も手がけてきた。北野武監督の『座頭市』では、シッチェス・カタルーニャ国際映画祭(スペイン)最優秀音楽賞や日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。昨年公開の「アウトレイジ 最終章」でも日本アカデミー賞最優秀音楽賞に輝いた。

 ビートニクスの結成は1981年。当時としては斬新なテクノ/ニュー・ウェイヴ・サウンド、若者の風俗や日本人の中庸意識への怒りを表現した。アルバムの発表後、断続的に活動している。昨年5月、赤塚不二夫生誕80年を記念した「バカ田大学祭ライブ」への出演を契機に活動を再開し、7年ぶりに今回の新作を発表した。

 新作について、高橋は“小難しい曲、怒ってるふうな曲、やたら悲しい曲、少しほっこりする曲、そして、もちろんノリノリだったり、馬鹿な曲なんかとともに……”。鈴木は“このアルバムには、ロック、ポップ、テクノ、ニュー・ウェーヴ、エレクトロニカ、アヴァンギャルドからのイディオムとクォーテーションが大量にちりばめられてます。それらは高橋鈴木による本能的セッションから生まれました。予知的歌詞も含めて。お楽しみ下さい。次はいつかな”と語る。

 以前は、それぞれが単独で曲を作って歌うこともあったが、今回は全曲2人の共作。お互いのひらめきに任せ、片やピアノ、片やギターと、2人同時に違う曲を演奏しながら収録。“誰がどこを作ったのか、自分たちもわからなくなっちゃった”という。そんな2人を多彩なミュージシャンが支えて制作された。

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小倉エージ

小倉エージ

小倉エージ(おぐら・えーじ)/1946年、神戸市生まれ。音楽評論家。洋邦問わずポピュラーミュージックに詳しい。69年URCレコードに勤務。音楽雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン(現・ミュージックマガジン)」の創刊にも携わった。文化庁の芸術祭、芸術選奨の審査員を担当

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