■早期発見できれば内視鏡で切除可能

 現在、AIに着目し診断精度の向上をめざす研究は他のさまざまな施設でおこなわれており、早期発見への貢献が期待される。

 早期発見によるメリットは、からだに傷をつけずにがんが根治できる内視鏡治療が受けられることだ。

 内視鏡治療は、検査に用いるのと同じ内視鏡のなかに治療器具を挿入するもので、スネアという輪でがんを締めつけて通電して切るEMR(内視鏡的粘膜切除術)と、粘膜下層に専用のナイフを入れて切り取るESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)がある。がんは一括で取ることが根治へ導くには重要であるため、2センチ以下の小さいがんはEMR、それ以上の大きさで粘膜にとどまっているがんの場合や、EMRでの一括切除が困難な場合はESDでの治療がおこなわれる。近年は熟練した技術をもつ医師のもとでは、がんが粘膜にさえとどまっていれば10センチを超える大きさでもESDでの治療が可能だ。

 治療後、病理検査で完全に取りきれていると診断されれば根治となる。取りきれていない場合や、粘膜よりも下にがんが入っている場合は外科手術となる。近年ではおなかに数カ所穴を開ける腹腔鏡手術が普及し、直腸がんに対しては4月からロボット手術が保険で受けられることとなった。

大腸がんは、内視鏡治療の適応にならない場合でも、外科手術で根治が大いに見込めます」(斎藤医師)

 現在、各病院や大学、研究施設が新技術の開発にしのぎを削り、機器の性能と医療技術の向上をめざす。この努力と、検診受診率の向上が合致すれば、早期治療が期待でき、大腸がんの死亡率は劇的に下がるはずだ。

(文・伊波達也)

※週刊朝日5月25日号