また、「腕がいいだけではいい歯医者とは言えない」とスウェーデンデンタルセンター理事長の弘岡秀明歯科医師は話します。「この症状の原因は何か」「どのような治療が必要か」など、病気や治療について説明する能力や、患者の生活背景を知り、患者がどのような治療を希望するのか、例えば「痛みをなくしたい」のか「安心してものが食べられる歯を入れたい」のかなど、ニーズを理解する能力も重要だといいます。

「患者の希望を聞かずに強引に治療を勧めたり、『100%安全』『一生もつ』など利点ばかりを強調する歯科医師は良心的とは言えません。リスクもきちんと説明し、最終的には患者さん自身が治療法を選択できるようにするのがいい歯科医師と考えます」(弘岡歯科医師)

 患者側の、歯の健康に対する意識の低さ、病気や治療への知識不足、歯科医師についての理解不足なども問題と考えられます。歯科の病気や治療について勉強することや、患者にとって都合のいい情報だけをうのみにせず、正しい情報を取捨選択する力を養うことが大切です。

■見た目や利便性だけで選ぶ患者も多い

 東京歯科大学教授の石井拓男歯科医師は、「患者さんが、歯科医師の専門性や技術力の高さを知るのは難しいし、そこまで意識している人は少ないはず。多くの人は評判や利便性などで選んでいるのでは?」と話します。

 実際、「むし歯の治療目的で矯正歯科を受診してしまう」など、歯科の理解が不十分な患者や、「設備が豪華」「休日も診療してくれる」など、見た目や利便性で選んでいる患者も多いようです。

 いい歯医者と巡り合うために、まずは歯科医院や歯科医師の基本を知り、賢い患者になることが大切といえるでしょう。

◯取材協力
東京歯科大学社会歯科学講座教授
石井拓男歯科医師

スウェーデンデンタルセンター(弘岡歯科医院)理事長
弘岡秀明歯科医師

(文・出村真理子) 

※週刊朝日MOOK「いい歯医者2017」より