伊東:カッコイイこと言っちゃいました(笑)。林さんにお聞きしたかったんですけど、今、本が売れないじゃないですか。林さんは80年代からメディアの寵児的な存在として登場されて、メディアへの露出の仕方が非常にうまいですよね。文壇の重鎮として、本という文化の復活を図る秘策をお持ちじゃないですか。

林:いや、そんな……。いちおう、日本文芸家協会の副理事長をしているんですが、寄るとさわると「本が売れない」という話ばっかりで、どうしたらいいですかね。伊東さんはネットを非常に重視していらっしゃると聞きましたけど。

伊東:僕はファンを3階層に分けて考えているんです。僕が本を出せば必ず買ってくれるコア層、メルマガを読んでくれる層、SNSでフォローしてくれる層。この三つの層それぞれに対して異なるアプローチを行い、読者の皆さんと一緒に読書を楽しんでいこうと。読書会も定期的に開催し、大きなイベントに育てていくつもりです。自分の本が売れればいいというのではなく、「読書をもっとおもしろくしていく」という発想です。今の時代、専業作家になる自信がない方が僕の周りにも多くいますが、作家って生産性と多様性と安定性の三つが確保できていれば安泰だと、僕は思うんですよ。

林:さすが元経営コンサルタントのお言葉ですね。

伊東:まず多様性ですが、特定分野だけ書いていると読者が自然減するんです。しかしジャンルを広げると読者数は減らず、逆に増えます。僕の場合、それを考えてミステリー分野へと進出したんです。

林:うちの娘が「ママはミステリーが書けないから売れないんだよ」って言うんです。でも、ミステリーって伏線を置かなきゃいけないし、才能とテクニックが必要だから私には無理かなと思って。ただ、多様性なら私も自信あります。日経新聞の官能小説(「愉楽にて」)と『西郷どん!』を、同時に書いてましたから。

伊東:生産性は、いかに自分が書ける環境をつくるかが勝負です。

林:聞いたところによると、伊東さんはいつもファミレスで書いてらっしゃるんですって?

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