読者の目を引くシニア向け保険の新聞広告(撮影/写真部・掛祥葉子)
読者の目を引くシニア向け保険の新聞広告(撮影/写真部・掛祥葉子)

「85歳まで申し込める医療保険・死亡保険」「持病があっても申し込めます!」……。

 新聞を丁寧に読む人なら、この冬、こんなキャッチフレーズが躍る広告を頻繁に見かけた覚えがあるのではないか。

 オリックス生命のシニア向け保険広告だ。例えば、3月だけでも朝日新聞朝刊に12回も掲載された。同生命の永山宏司オムニチャネル営業本部長が言う。

「例年、冬は広告を多めに出しますが、今年はさらに2~3割増やしました。ほかの全国紙にも出しています。昼間を中心に流すテレビCMも増やしました」

 新聞を読み昼間にテレビを見るのはシニア世代。まさに、ターゲットに一大攻勢をかけた格好だ。

「保険業界は、保険料計算のもとになる標準生命表の改定を4月に控えていました。寿命が延びる結果になったので、医療保険は普通なら保険料値上げになるのですが、当社は据え置きの方針でした。そこで積極的に展開していこうとなったわけです」

 オリックス生命は2015年ごろから、シニア世代向け広告に力を入れている。「お客様から、好評をいただいている」(永山本部長)というから、大量に広告を打っても、打った分のリターンはしっかり得ているようだ。

「人生100年時代」は、保険分野にも確実に影響を及ぼしている。長生きに備えた「終身年金」が出たかと思えば、認知症に特化した保険も登場している。業界関係者は口をそろえる。

「若い人が保険に入らない傾向があるため、保険会社の目はお金のあるシニアに向いています」

 もともと日本人の「保険好き」は有名で、とりわけ50代は多数の保険に加入している。生命保険文化センターの調査によると、世帯の年間払込保険料は全年齢平均の「38.5万円」に対し50代は「約49万円」にも上っている。60代前半でも「約43万円」だ。

 しかし、考えてみれば、一家の大黒柱の「万が一」が心配だったころの保険との付き合い方と、リタイア後へ向かう時期のそれが同じであるとは思えない。50代は子供の大学卒業→独立が見えてくるから、「わが家と保険」をもう一度考えるいい時期だ。保険会社の「攻勢」にさらされるその前に、まずは今入っている保険を点検し、どんな選択肢があるのかを知っておくべきではなかろうか。

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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