白石:怖くないです。私のイメージがおどろおどろしいだけで。演出の鴨下(信一)さんがとてもおもしろくアレンジしてくださっています。

林:鴨下さんといったら、TBSの「岸辺のアルバム」を手掛けた方ですよね。

白石:そうです。鴨下さんはとっても博識で心の広い方なんです。

林:新作はやらないんですか。

白石:そうなの。でも、このごろは佐野史郎さんと二人で読んだりしていて(「笑った分だけ、怖くなる」15、17年)。私ね、林さんの、まじめに書いてるフリして人を食ったようなところが好きなの。そういうのってきっと私に合ってるような気がする。林さん、怖い話とかあります?

林:あります、その名も『怪談』という短編集が。「玉呑み人形」が入った短編集もあるので、あとで送らせていただきます。ここで売り込んじゃおう(笑)。

白石:たくさん書いてらっしゃいますよね。こんこんと泉が湧いてくるような感じなのかしら? 私は作家さんが書いてくださった素敵なものを、さも自分から湧き上がったかのようなフリしてやるのばっかりでしょ。すごいわね、そういうの。

林:でも、インタビューで読みましたよ。台本をもらって自分の世界がパーッと広がって、そこからつくり上げていくときが一番楽しいって。

白石:それはそうなんだけど、自分の中に源があるわけじゃないでしょ。ずっとごまかして生きてきてるから、作家に何か話すなんてすごく不安。

林:何をおっしゃいます。書いた世界がお芝居になって何十倍にも広がるって、それはそれはすごい魔力ですよ。だから作家には芝居好きが多いんです。遠藤周作先生は劇団をつくっちゃいましたし、井上ひさし先生もお芝居の魅力にすっかり取りつかれて……。

白石:あっ、井上ひさしさんの作品を持って上海に行ってたの(3月29日~4月1日)。

林:「ムサシ」ですよね。どうでした、上海での反応は。

白石:沸いて沸いて、すごかった。私、日本のお客さまでああいう目にあったことはない。主演の藤原竜也さんと溝端淳平さんが既に中国でも映像でブレークしていたので、2千人入るところが満席で4回公演。お客さんは若い方たちで、舞台の上で勇気づけられて、とにかく素敵な思いをしました。

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