結局、福田氏に対し、できることは退職金からの減給のみという。

「退職手当法という法律があり、そこで減額や返納の規定があります。麻生大臣はそのことをおっしゃっているのではないかと思います」(同)

 そもそも、官僚たちのセクハラに関する規則は弱すぎるのではないか、と法律家の立場からの批判もある。

「暴行脅迫かパワハラのような影響力を用いるか、相手を精神疾患に罹患させないと懲戒免職にならないんですよ。しかも、相手の意に反するということを認識した上でという留保がついている。もし、相手が嫌がっていると思わなかったと言い訳したらそれまで。処罰されない。それも信じられない。変えなきゃいけない」(前出・足立弁護士)

 セクハラ被害者は多くは、心身に不調をきたすことが多いという。独立行政法人労働政策研究・研修機構の内藤忍副主任研究員(労働法専攻)はこう語った。

「私も昨年、全国のセクハラ被害に遭われた人に、話を聴かせてもらったが、『もう体調が悪くなって会えない』といってきた人がたくさんいました。相談から救済までの支援体制を構築し、セクハラ休職を余儀なくされた人の職場復帰の権利を確立することも必要です」

 今回はテレビ朝日で取材した録音データを週刊新潮に提供したことが不適切ではないかという意見も出たが、これについては、こう指摘する。

「公益通報者保護法という法律があり、会社に内部通報したにもかかわらず、対応してくれなかった場合には報道機関への通報も保護される場合があります。労働安全衛生法や強制わいせつなど刑法の違反が考えられる場合です。本件情報提供も『不適切』とは言えません」(内藤氏)

 麻生財務相の一連の対応に関して、社民党の福島瑞穂副党首はこう批判する。

「福田さんはしっかり事実を認めて謝罪をすべきであって、セクハラがなかったという居直りを許してはならない。財務相は官房長がゆるい聞き取りを福田さんに対してして、セクハラを否定する調査結果を財務相名で出したんですよ。福田さんをかばったんです。麻生財務大臣のセクハラに対する認識もあまりもひどい。セクハラが重要な人権侵害だという認識がないんですよ。麻生財務大臣の辞任も求めていきます」
風穴が開いた♯MeToo運動はさらなる勢いを見せている。(本誌 上田耕司)

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