「100人の起業家のうち、95人は名前も知られないまま消えていく。残った5人のうち4人が死んでいくのを残った1人が見送る。成功者は1人。それは、運がありチームが作れているから生き残ることができるのです。起業家ならば参加しくれる人たちへの責任を取らなければならない。お金のためではなく、生きた経験を共有し、人の生活を良くすることをビジョンにしてください。起業の経験は素晴らしいことですが、決して簡単なことではなく、厳しいことの方が多いです。私が学生によく言うのは、試すことにコストはかからない。でも、諦めてはいけない。始めたらやり通すことです」

 創業から20年程度で世界最大級の企業グループを作り上げた「生きる伝説」の人の言葉だけに、多くの学生を魅了した。

 学生らの関心も高く参加希望者が殺到。定員約1200人に対し、公募開始1日で4480名の申し込みが集まったという。抽選で入場者を選んだが、入れなかった学生も続出した。何とか潜り込めないかと教授に直談判する人もいたという。

 運良く参加できた東京外国語大学の古川遥夏さん(22)は感動したという。起業を親に相談したが、「企業に就職しなさい」といわれた。起業したくても失敗する恐れもあり、不安が膨らんでいた。だが、ジャック・マー氏の言葉を聞いて「こういう人になりたい。自分が信じた道を生きたい」と前向きになれたという。

 中国からの留学生で早稲田大学創造理工学部3年の趙心鍼さんは、「成功者の一人として、どういう考えを持っているか知りたい」と思い参加していた。

 数々の困難を乗り越えて起業家として成功したジャック・マー氏。彼の背中を追う若い起業家が詰め寄せたイベントに活気と熱意を感じた。(本誌・岩下明日香)

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