ヒップホップ系のアーティストが、プロデューサーやDJ、ミュージシャンとともにスタジオで音づくりをしているのに倣い、ニューヨーク、ロサンゼルスで初顔合わせのミュージシャンとレコーディングに取り組んだ。その結果、ビヨンセ作品に参加してきたドラムのルイス・カト、ジャズ・ファンク・トリオのソウライヴのキーボード奏者のニール・エヴァンスら、多彩な顔ぶれを起用することになった。

 幕開けの「コネクテッド・バイ・ラヴ」はスローでヘヴィーなブルース・ベースで、ジャックならではの曲調。重厚なシンセ、ゴスペル的なオルガンやコーラスをフィーチャーしている。シンプルなラヴ・ソングだが、ジャックはこう語っている。

「今はアメリカをはじめ世界的にもドラスティックな時代で、毎朝起きてニュースを見る度に憂鬱な気分になるし、危険だと感じる。だから人間のポジティヴな面を歌った、よりソウルフルな歌を書きたかった。分断(divide)ではなく人間の繋がり(connect)について歌いたかった」

 2曲目の「ホワイ・ウォーク・ア・ドッグ?」は、アパートで思いついたまま歌を録音して、ドラム・マシンを足し、隣に騒音が漏れないように楽器を録音機材に直接つないで録音したという。鳥たちが庭を自由に飛び交い、は気ままに徘徊し、時に驚愕させる行動をとるのに“なんで犬は散歩させられるんだ”と、人間の身勝手さに疑問を投げかけている。

「コーポレーション」は、ビヨンセとのコラボ曲同様、ジャックのレッド・ツェッペリンへの敬愛がうかがえる曲だ。イントロのドラムは「移民の歌」、クラリヴィットのリフは「トランプルド・アンダーフット」を思わせる。ファンク色の濃いブルース・ロック・ナンバーで、ジャックのワイルドなギターも炸裂。

 ザ・ホワイト・ストライプス時代の曲で、エフェクターをかけたギターの音色が最後のパズルのピースとなり、ようやく完成に至ったという「オーヴァー・アンド・オーヴァー・アンド・オーヴァー」でのファジーなギターはジミー・ペイジ、歌いぶりはロバート・プラントを意識したかのようだ。

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