また、今回の保険適用で懸念される点もあるという。

「保険診療となり実施する病院が広がりますので、手技の高さが担保できない病院での実施は心配です。将来、実施病院が広がるのは歓迎すべきことですが、当初は、自費診療時から経験を積み、学会の施設基準を満たす20病院くらいで実施することになるでしょう」(絹笠医師)

 絹笠医師は、手術手技が担保された医師を増やすため手術指導に全国を回る。

「保険適用の要件では実施病院は外科系の症例データベース『NCD』に治療成績を登録することになっています。この蓄積データで安全性や根治性が担保されていることを証明できれば、実施病院も広がっていくと思います」(同)

 国立がん研究センター東病院大腸外科長の伊藤雅昭医師は、次のように話す。

「現在、国内で稼働する『ダヴィンチ』は泌尿器系で普及し、200台以上あります。ただ、『ダヴィンチ』は医療現場にとってはコスト的に高い。今後はさまざまな手術ロボットが出現して、価格競争によるコストダウンを望みます」

 伊藤医師らは、現在、日本の優れた外科技術による手術動画を読み込んで、AI(人工知能)での制御により手術をおこなうロボットの実用化に向けての研究をおこなっている。コストと医療技術のバランスからロボット手術が評価される時代が来ると予測する。小型ロボットや触覚のあるロボットなど、さまざまな企業や研究機関で手術ロボットの研究開発は進んでいる。

「海外のシンクタンクの予測では、数年でロボット手術は約3倍になるという試算もあります」(伊藤医師)

 指導医不足の問題や認定医制度の確立など、課題は山積だが、今後、ロボット手術が普及していくのは間違いない。(ライター・伊波達也)

週刊朝日 2018年5月4-11日合併号