大腸がんデータ(週刊朝日 2018年5月4日-11日号より)
大腸がんデータ(週刊朝日 2018年5月4日-11日号より)
イラスト・今崎和広
イラスト・今崎和広

 大腸がんのなかでも、直腸がんの手術は難しい。骨盤内の狭い空間での手術になり、操作を誤れば神経や血管を傷つける恐れがある。その直腸がんに対して2018年4月、繊細な動きを得意とするロボット手術が保険適用になった。

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 がん治療において、この春、大きなトピックがある。手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使った手術の保険診療が認められたことだ。これまで前立腺がんと腎がんに対する手術のみが保険適用だったが、この4月に、胃がん、肺がん、子宮体がんなど12件の術式で同時に適用になった。直腸がんもそのなかの一つだ。今まで自費診療で200万円程度かかっていた治療費は、高額療養費制度を使えば、10万円程度で受けられる。

 今回は直腸がんのロボット手術について取り上げる。

 大腸は約2メートルの長さがあり、そのうち肛門の上15センチほどが直腸、残りの部分を結腸という。結腸は、小腸の出口につながる盲腸からおなかの中をぐるりと回るように上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に分かれている。この結腸と直腸で発症するがんを総称して大腸がんという。

 大腸がんはわが国でもっとも多いがんで、年間14万9500人がかかる(2017年がん罹患数予測 国立がん研究センターがん対策情報センター)。がん種別年間死亡数も2位。男性は3位、女性は1位(16年、同)となっている。ただし、早期発見・治療ができれば治りやすいがんで、5年生存率は90%以上ある。

 早期発見するための一次検査は、便のなかに血液が混じっていないかを調べる便潜血検査だ。2日間の便採取でいずれかに血液が混じっていたら陽性とされ、大腸内視鏡などによる精密検査が推奨されている。

 早期発見され、がんが大腸内壁の粘膜にとどまっていれば、肛門から挿入する内視鏡での治療が可能だ。それより進行すると外科手術で切除することになる。

 外科手術には、従来のおなかを大きく切る開腹手術と、おなかの数カ所に穴をあけ、そこから手術器具を挿入し、ガスで膨らませた腹腔内の空間を利用しておこなう腹腔鏡手術がある。腹腔鏡手術は開腹手術に比べ、患者のからだの負担が少なく、回復が早い。

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