──そこにあえて目を向けたのはなぜでしょう。

ミッツ:いま「装う、偽る」ことって世の中的に悪とされていますよね。「まっさらで素直で、あるがままに」が絶対的な正義だと。それはそれでけっこうなんですけど、「まっとうで健全」なものと同じ分量だけ「よこしまな感情」も必ずある。それを「ないこと」にするのは不健全ですよね。人間って虚勢を張って周りをやっかんで生きていくものでしょう?

──それを無視してエンターテインメントは成り立たない、と。

ミッツ:悪あがきって美しくて尊いじゃないですか。最初から他人や世の中のせいにして何もしないぐらいなら、偽って装ってあがきまくって力尽きるほうがいい。不徳や不健全は噛めば噛むほど味が出ますから。私たちの音楽も、そういう存在でありたいですね。

(構成/ライター・中村千晶)

週刊朝日 2018年5月4-11日合併号