「心と体の懸け橋は呼吸です。呼吸を感じてみると、無理をしているのかがわかります」

 中里さんによると、「頑張る美学」を持っている人は、たとえばスタジオでは隣の人のポーズが気になり、なかなか集中できない。周囲の人ができているのだから自分もやらねば、となる。これでは呼吸も浅くなり、効果が薄いそうだ。

 続いて70~80代。

「シニアの方には、健康寿命を延ばすために足腰の筋力をつけるヨガを勧めています。ヨガは『内臓の健康』『呼吸力のアップ』『筋力維持』が期待できます。そして免疫力が上がることで、健康につながります」(同)

 中里さんは、シニア向けとして、自宅でできるオススメ簡単ポーズも教えてくれた。

【1】木のポーズ
 両足で立った状態から、片方の足を内側に曲げ、反対側の太ももの付け根(できるだけ高いところ)につける。両手は合わせて上に。「一本足で立つことは、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)予防にいい。集中力も上がります」

【2】ねじりのポーズ
 横たわり体をねじるだけ。「内臓が活性化され、楽に呼吸できるようになります」

【3】スフィンクスのポーズ
 うつぶせの状態から上半身を起こすだけ。「前かがみがちのシニアには体をそらすのが有効」

 その中里さんは、最近「がんフレンズヨガ」にも力を注ぐ。自身も4年前に乳がんに罹患(りかん)。締めに「私は元気だ」と心で唱え、「自分を治せるのは自分しかいないことを気付かせるヨガ」(同)だという。

「参加者の中には、40歳前後の女性がいますが、こう言っていました。『がんと聞いてほっとした』と。『やっと立ち止まれる』と思ったそうです。それほど、みんな頑張りすぎているのです。頑張らない自分なんて許せないのです。でも人間は絶対走り続けられない動物。頑張るためには、一度立ち止まることが大事なんです」(同)

 ヨガと一口に言っても、さまざまなタイプがある。選択肢は増える一方だが、「これは楽しそう」と思えたら、それを試してみてはどうだろう。長く続けてみたら、その先に、心も体も変化している自分と出会えるかもしれない。(本誌・大崎百紀)

週刊朝日 2018年4月27日号