馬嶋屋菓子道具店東京都台東区西浅草2-5-4
馬嶋屋菓子道具店
東京都台東区西浅草2-5-4

 職人の技を支えるのは、その世界に伝わる優れた道具の存在。もう一つの主役ともいえる、匠ならではの道具を紹介する。

【フォトギャラリー】匠ならではの道具をご紹介!

■菓子木型職人
 味もさることながら、見た目の美しさが求められる和菓子。そんな和菓子の木型をつくっていたのが大河原仁さん。「仁さんの型は彫りが深く、そこから生み出される菓子に勢いを感じました」と馬嶋屋菓子道具店の吉田友重さんは語る。同じ型を彫った際、菓子の形、重さが寸分違わないのも大河原さんの技の一つだ。

 店舗の一角でその仕事を披露していたが、最近、静かに息を引き取った。今はその道具と木型だけが店に残る。

「馬嶋屋菓子道具店」東京都台東区西浅草2‐5‐4

■和竿職人
細い竹を使い、日本古来の製法でつくられた竿を和竿と呼ぶ。川や池などでの釣りに適し、江戸の昔から釣り好きの間で圧倒的な支持を集める。

 江戸和竿の伝統を今に受け継ぐ東作。和竿は、細い竹の節をくりぬき、火入れをして竹を真っすぐにし、形を整え、漆を塗るなどして完成する。

「節を抜く丸棒という道具が特に重要で、竹の太さにより、さまざまな太さのものを使います」と松本亮平さん。

 東作の竿は軽く、柔らかいとされている。かかってもなかなか釣り上がらず、魚との駆け引きが楽しめるとして、創業以来、釣り好きの江戸っ子たちに支持されてきた。

「とくに竿の穂先を整える場合は、手の加減が決め手となります。すべてを手作業でつくる和竿職人にとって、道具は手であり、体でもあり、そして命でもあります」

「東作本店」東京都台東区東上野3‐32‐13

■刀鍛冶
古代から今も同じ製法でつくられるのが日本刀であり、その伝統と技を現代に伝えるのが刀鍛冶である。いまや芸術品として世界中から注目を集める。

「刀鍛冶はそんなに人数がいないので、玉鋼(たまはがね)をつかむはし、鍛錬するための小槌、刀を削るせんすきなどの道具はほとんど自分たちでつくってます。鉄の道具をつくるなんて、お手のもんですよ」とは吉原義人さん。

 日本刀の製作は玉鋼を炉で熱し、たたいて延ばす鍛錬を繰り返して成形し、焼き入れをし、研磨して仕上げる。

 なかでも焼き入れは刀に命を吹き込む瞬間でもある。焼き入れで浮かびあがる刃文(はもん)が日本刀の証しだと力説する。

「道具は道具であって、思い入れはありません。大事なのは道具によって生み出される刀です」と吉原さんは話すが、並んだ道具を愛おしく見つめていた。

「日本刀鍛錬道場」東京都葛飾区高砂8‐17‐11

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