高齢者糖尿病の特徴(週刊朝日 2018年4月27日号より)
高齢者糖尿病の特徴(週刊朝日 2018年4月27日号より)

 糖尿病患者の約7割を高齢者が占めている。高齢者は心身の機能において中高年と異なり、治療に配慮を要することが多い。とくに強い薬を使っている高齢者は低血糖を起こしやすいため、コントロール目標は緩く設定されている。

 糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)の値が慢性的に高い病気で、推計患者数は約1千万人。近年は高齢の患者が増えているが、高齢者には特有の問題があり、若い世代と同じ治療は難しいことが多い。そこで、2017年に日本で初めての「高齢者糖尿病診療ガイドライン」が発表された。

 高齢者とは通常、65歳以上をいうが、このガイドラインで対象にしているのは、おもに治療に配慮が必要な高齢者だ。具体的には、後期高齢者(75歳以上)と、前期高齢者(65~74歳)のうち心身の機能に一定以上の低下がみられる患者が当てはまる。活動的で頭もしっかりしている前期高齢者には、64歳以下の患者と同じ治療がおこなわれる。

「いまは患者さんの7割近くが65歳以上で、そのおよそ半数は後期高齢者です。若いときから糖尿病だった人だけでなく、高齢になって発症する人も少なくありません。血糖値を下げるホルモンのインスリンは、年をとると働きが低下したり、分泌量が減ったりするので、高齢者は糖尿病になりやすいのです」

 と、東京都健康長寿医療センター内科総括部長の荒木厚医師は言う。

 高齢者糖尿病には、中高年の糖尿病にはない特徴がある。

 第一に、患者の心身の機能が、程度の差はあれ低下していることだ。高齢者の多くは、日常生活動作(ADL)低下、認知機能低下、サルコペニア(加齢による筋肉量の減少や筋力低下)、フレイル(心身の機能がやや低下し、ストレスによって要介護になりやすい状態)などの問題をベースに抱えている。転倒しやすい、うつ傾向、低栄養などもよくみられる。

 これらを総称して「老年症候群」というが、それが増えてくるのが70代後半、つまり後期高齢者だ。しかも、糖尿病がある人はない人に比べて約2倍、起こりやすい。

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