元兵士たちは、足を切断したり、目が見えなくなったり、下血をしたりと被曝の後遺症が出ている。福島原発のメルトダウンが起こっているのに、上官から放射性物質の危険性が伝えられなかった。兵士たちは防護服もなしで作業させられたり、海水を飲んだり、空母に積んであるヨウ素剤も足りず、飲んでいない元兵士もいた。

──元兵士らは裁判で「ヨウ素剤を飲んでいないのに、上官から『飲んだことにしてサインしてくれ』と命令された」と証言しています。

 米国にとっても不都合な真実が多い、難しい裁判だ。でも、助けてもらった米国兵にこれだけの症状が出ている事実は当初、わからなかった。数年経過し、おかしいなとだんだんと症状が出てきたんだ。甲状腺がんにもなった。それでも、裁判では被曝が原因とは断定できないとなってしまう。私も何かできないかと思った。

──細川護煕氏、吉原毅・城南信用金庫顧問らと16年、「トモダチ作戦被害者支援基金」を設立し、当初の目標額は1億円だったが、今では3億円も集まったそうですね。しかし、安倍政権下で原発ゼロを訴えると、風当たりが強いのではないですか?

 米国の元兵士たちを取材した民放のドキュメンタリー番組(昨年10月放送)は、私の登場シーンをすべてカットした。「トモダチ作戦」を追いかけているエィミ・ツジモト氏に紹介され、元兵士らに会いに米国へ行き、取材も現地で受けたが、放送直前、ツジモト氏から連絡があり、「小泉さんの場面は全部カットされた。上層部の意向でやむを得ず、現場スタッフが指示に従った」と聞かされた。米兵の被曝のことが放送されたことはよかったけど、ひどいなと思ったね。

──安倍政権に対するメディアの忖度でしょうか?

 別の民放で今年3月にインタビューを受けたときも約束を破られた。収録は50分ぐらいで「全部放送するんですか」と聞いたら、「15分ぐらいに編集する」と説明された。「経産省が訴える原発の3大スローガンである安全、コストが安い、クリーンエネルギーは全部嘘だ、と話した部分だけはカットしないでね」とお願いすると、「わかりました」とスタッフらは言っていたのに、放送された番組を見たら、カットされていたよ。

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