そもそも今回のブロッキング要請は法的な根拠に基づいていない。憲法に抵触しかねない強い措置を講じるのであれば、立法によって適用範囲や要件を厳格に定め、司法による審査を経て実施されるのが筋である。

 そうしたプロセスを省略し、政府の独断でアクセスをブロッキングさせるのであれば、どれほど「急を要する」事態であっても、憲法が禁じる「検閲」にあたると言わざるを得ない。

 政府がブロッキングするサイトを自由に決められるようになれば、悪名高い中国のネット検閲システム「金盾(グレートファイアウォール)」と構造的には変わらなくなる。金盾は、中国共産党や政治家にとって都合の悪い情報を、国民から隠す仕組みだ。

 今回反対の声を上げたなかで、海賊版に対して肯定的な人や団体はいない。

 憲法が定める表現の自由や知る権利とも関わる問題なのに、民主主義のプロセスに反して議論もなく進めようとしている。政府のその姿勢が問われているのだ。

週刊朝日 2018年4月27日号

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津田大介

津田大介

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)

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